萬葉集には13首もの「讃酒歌」がある

この歌なんてきわめてシンプル、「お酒を飲まない人、サルに見える!」という歌……。悪口かよ。苦笑してしまうわ。

しかしお酒を飲む人の詠む歌は、これで終わらない。実は、まだまだある。

萬葉集には、なんと13首もの「讃酒歌」が掲載されているのだ。

巻三という巻におさめられた「讃酒歌」は、歌群(歌たちのまとまり)の題詞に「大宰帥大伴卿の酒を讃めし歌十三首」と書かれている。お酒をめる歌たち、と書いて、讃酒歌。大宰帥大伴卿とは大伴旅人(当時、大宰府の長官だった)のこと。

しかしお酒をたたえるだけで13首も歌が詠めるなんて、旅人、どんだけお酒が好きなんだ……とツッコむべきところ。というかむしろ、お酒が好きな人が萬葉集の時代から変わらず居続けることに感動する、というべきだろーか。

酔っ払いの号泣を全肯定

讃酒歌には、ほかにこんな歌がある。

価なき宝といふも一杯の濁れる酒にあにまさめやも
(巻三・三四五)
現代語訳
価値のしれない珍宝であっても、
一杯の濁酒に勝てることなんてないんやで

……宝よりも価値のあるお酒、宣言。

この世にし楽しくあらば来む世には虫に鳥にも我はなりなむ
(巻三・三四八)
現代語訳
この世で楽しくお酒を飲んで生きられるならば、
来世は虫や鳥にでもなろうかな

……お酒を飲むことが今世のいちばんの楽しみ、発言。

もだ居りて賢しらするは酒飲みて酔ひ泣きするになほしかずけり
(巻三・三五〇)
現代語訳
黙って賢そうにしているよりも、
酒を飲んで酔い泣きするほうがいいはずだ

……酔っぱらいが泣くこと、全肯定、宣言。