ジャパニーズウイスキーの輸出金額がこの10年で9倍に

世界的評価が高まったおかげで、2008年(平成20年)に17億円だったウイスキーの輸出額が2018年(平成30年)には約9倍の150億円になった(図表2)。また、2010年ごろにはウイスキー需要の高いフランス、パリのウイスキー専門店でジャパニーズウイスキーフェアが開催され人気を博したのを機に、以来パリのバーや専門店の「ジャパニーズウイスキー」の品ぞろえは日本を圧倒している。

最近の日本産酒類の輸出動向
出典=国税庁

筆者が出張で行ったロシア、モスクワの百貨店やワインショップではメインの棚にずらり「ジャパニーズウイスキー」が並んでいるさまを見た。中国からは「ジャパニーズウイスキー」爆買いツアーの一団に何度もお目にかかった。「ジャパニーズウイスキー」に注目し、率先して買い始めたのはフランスやイギリス、ロシア、中国、アメリカといった蒸留酒最先端の国々であった。

日本国内のウイスキー人気の火付け役はハイボール

とはいえ正直、海外のウイスキーコンペの情報など、日本の一般庶民はほぼ興味がなかった。のんびり過ごしていたら、あれよあれよと価格が上がり、同時に国内の在庫がなくなってしまった。なんてこった。熟成に最低3年はかかるウイスキーだ。芳醇な香味になるには5年、いや10年、いやいやそれ以上の歳月がかかる。今思えば、「響30年」や「竹鶴25年」など、本当にお宝だったのだ。この先20年も30年も待たなければあの味には出会えない。なくしたものは実に大きい。

そのうえ、国内では別の方向からウイスキーブームが起こっていた。ずばり、「ハイボール人気」である。激しいウイスキー消費の右肩下がり状況を受け、サントリーが仕掛けたのが「サントリー角瓶」のハイボールだ。ときは2008年(平成20年)。ここから国内のウイスキー消費は見事V字回復を遂げた。

回復の理由も実に明確。人気に歯止めをかけている「ウイスキーの商品特性」を、ソーダで割ることですべて裏返しにしたのだ。

スモーキーフレーヴァーや濃厚で個性的な香味で、アルコール度数も高く、食事に合わないウイスキーを、ソーダで割ることによって、軽快で爽快な香味になるし、好みのアルコール度数にすることもできる。

レモンを入れればフレッシュさは増すし、なにより甘くないので食事にも合わせやすい。また人気女優のCM効果で、ウイスキーファンやマニアのみならず、一般庶民もこの味わいを知ることになる。そのころはまだブランドウイスキーも手に入りやすく、だれもが気軽に試すことができ、これで人気に火が付いた。