金言25:取引銀行“1行主義”では行き詰まる
「うちは地銀1行だけ」と言っていた会社が潰れた
銀行との取引は、1行だけに絞ってはいけません。以前、ある社長は「うちは地銀1行だけで十分。支店長とも仲がいいし」と言っていましたが、業績が落ちて、取引銀行からの融資が受けられなくなったとたん、倒産しました。武蔵野が都銀の貸しはがしにあっても貸し渋りにあっても倒産せずに済んだのは、地銀や信金からの融資で対応できたからです。
中小企業の場合、「都市銀行1、地方銀行1、信用金庫1、政府系金融機関1」が基本です。あとは、自社の規模や地域における金融機関の数に応じて、増やしていけばいい。売上が5億円以下の会社なら、都銀は1行で十分。売上が1億~2億円の会社なら、地銀がメインでいい。
3行から融資を受けるなら、1行からたくさん借りず、バランスよく借入れる。メインバンクからの借入れは、多くても55%以内、私の経験上、35%が適正です。
また、1案件につき1行から借りるのが基本ですが、会社の業績が悪いと、1行からの借入れが「満額」に満たない場合があります。そういうときは、他行から借りて不足を補う必要があるので、「1行主義」では対応しきれません。資金を潤沢にして、ライバルより先に投資をするには、つき合う銀行は多いほうがいい。武蔵野は現在、9行と取引をしています。
金言26:メインバンクは頻繁に変えるな
「守りタイプ」の支店長になったらチャンス
メインバンクの定義は、2つあります。ひとつは「大きな投資に対応してくれて、会社が存続の危機に陥ったときに支えてくれる銀行」、もうひとつは「個人保証も取らず、担保もつけずに、プロパーで一番お金を貸してくれる銀行」です。
こういうメインバンクは、「頻繁に変えない」のが基本です。もちろん、商取引なので変えても構いません。メインバンクには、金利や手数料など、それなりの対価を払っているから、銀行と会社の関係はフィフティー・フィフティーです。ですが、「今日はこの銀行、明日はこの銀行」と、自社の都合で頻繁に変えるべきではない。
ただし、自社の規模や成長に応じて軸足を変える、つまり、取引する銀行のバランスを変える必要はあります。私の経験上、融資に積極的な「攻めタイプ」の支店長が2期続くと、3期目は融資に消極的な「守りタイプ」が着任する気がします。そのときは、メインバンクを変えるチャンスです。「おたくが貸さなくなったので、変えます」という理由が成り立つからです。
ですが、それは長期的な展望に立って行うべきです。銀行は、取引の「歴史」や「長さ」を重視します。銀行と会社は、持ちつ持たれつの関係であることを忘れてはいけません。