「MMTがわからない」とは言えない人へ

中野剛志『奇跡の経済教室【基礎知識編】』(KKベストセラーズ)

第8位にランクインした『奇跡の経済教室【基礎知識編】』は、いま注目を集めるMMT(現代貨幣理論)をわかりやすく解説したものです。なぜ日本はデフレに苦しめられているのか、そしてデフレを解消するためにはどうすればいいのか。MMTでは主流派の経済学では考えられないような主張が、次々と登場します。「デフレ下ではいくら財政赤字を拡大しても大丈夫」「日本の財政破綻はあり得ない」「財政健全化はやっても無駄」……こうした主張を頭ごなしに否定するのは簡単です。しかし既存の理論がこの国の経済動向をうまく説明し、望ましい方向へ導けているかどうか、いま一度考えるべきではないでしょうか。

貨幣への正しい理解が欠如している限り、デフレ脱却は望めません。日本経済の再生は、貨幣を正しく理解することから始まります。貨幣の理解について総点検するうえで、本書ほど適したものはありません。MMTの基礎知識がしっかり身につく良書です。

『こち亀』作者が40年書き続けられた理由

第13位『秋本治の仕事術』も注目です。著者の秋本治氏は、マンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(以下、こち亀)を200巻まで描き上げ、芸術・文化の分野で活躍した人に贈られる紫綬褒章を受章しました。なぜ『こち亀』を40年休むことなく描くことができたのか? この本の中で、秋本氏みずからがその秘訣を語っています。

秋本治『秋本治の仕事術』(集英社)

秋本氏の仕事術は、働き方が多様化する現代において、自身をマネジメントしていく際にも大いに役立ちます。また40年間にわたってマンガのアイデアを出し続けてきた発想術も公開されており、クリエーティブな仕事にも活用できます。なにより「目の前にあることをこなし、ひとつひとつ積み重ねる」という長期的な持続力の大切さを、これほど説得力をもって語っている本はなかなかありません。

こち亀』を読んだことがある人にはもちろんのこと、『こち亀』を読んだことがなくてもも、秋本治氏の仕事哲学が伝わってくる一冊です。

先月から続けてランクインしたのは、『時間術大全』(第5位→第3位)でした。2カ月連続で多くの方に読まれており、現代人の抱える問題意識が反映されていると言えます。来月のランキングはどうなるのか、引き続き注目です。

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