「教師も医療関係者もスペシャリストと言われる職業です。彼らの業務は、ほかの誰かに相談できず、決断の孤独が生まれやすいのが特徴です。例えば、教師はクラスの生徒たちと触れ合う機会が多いとは言え、彼らに頼るわけにはいきません。責任も大きく、孤独を感じやすい」

友達の多さが正解ではない

仕事でたくさんの人とつながっていそうで、つながっていない。上位にランクインした業種にはそのような特徴があるのだ。

「3位のマスコミも、読者や視聴者からの声が作り手に直接届くわけではなく、自分の作ったコンテンツへの感謝が直接届きにくい仕事と言えます。人は自分のやっていることが誰かの役に立っているのかに疑問を持つと孤独を感じます。その点で、『孤独を感じる』と答えた人の割合が低かった運送・輸送業は日々誰かに頼られ、感謝される仕事と言えるでしょう。

荷物を届ければ、お客さんから直接感謝されます。バスの運転手ならば乗客からありがとうと言われる機会も多いでしょう。また、電気・ガス・水道業などのインフラ系は、個人の裁量権は少ないですが、大企業に所属し、チームで仕事をするケースが多いので孤独は感じにくいのでしょう」

最後に、孤独と年齢に関するデータを見たところ、孤独を感じる割合は20代と30代は80%なのに対し、40代以上は70%台と、おおむね年齢を重ねるごとに数値は低くなっていた。加えて、「孤独が好き」と答える人の割合は、50代が60%と際立っている。その背景にあるのは「家族の存在」と樺沢氏。

「精神科医としてさまざまな相談を受けますが、交友関係の悩みは若い人に圧倒的に多いです。年齢を重ねるに従って結婚して子供を持つ人の割合は増えますから、家族がいることで孤独を感じる人が減っているのは納得できます。

30代から40代で急激に数値が下がっているのはそのためでしょう。50代が孤独を好むのは、結婚したものの、家で居場所がないと考えている人が出てくるからではないでしょうか。家族がいても、ライフサイクルの変化で孤独を感じるのは珍しくないのです」

調査結果全体を通して、人とのつながりが孤独感に影響を与えていることがわかるが、「友達の数が多いことが正解なわけではなく、信頼できる相手を見つけ、感謝の言葉を投げかけられることが重要」と樺沢氏。やはり、妻など特定の1人を大事にすることが結局は重要ということだろうか。

アンケートは調査会社を通じて集計。20代、30代、40代、50代、60代各20人ずつ、13の業種でインターネット調査を実施した。

樺沢紫苑
精神科医・作家
1965年、札幌市生まれ。札幌医科大学卒業。米・イリノイ大学への留学を経て樺沢心理学研究所を設立。『学びを結果に変えるアウトプット大全』など著書多数。