「心理学や精神医学では、孤独は自殺を招く大きな原因と言われており、解決すべき社会問題と捉えられています。人は社会とのつながりがなくなったときに生きる意味を失い、自殺しやすい。一方で、自分のことを気にかけてくれる人が1人でもいると、自殺する確率は一気に低くなるのです。

自殺する人の3分の2は誰にも相談しないで自殺に至っているというデータがあります。気軽に相談できる人がいれば自殺を防げる可能性が高いのです。友達をいたずらに増やす必要はないですが、最低限、頼れる人がいることはとても重要なことです」

さらに興味深いのは、男女間でも孤独について差があることだ。

「どういうときに孤独を感じるか?」という質問に対し、男性は「誰もいない家に着いたとき」という答えが1位だったのに対し、女性は「悩みを相談する人がいないとき」が1位となった。

「配偶者が先に亡くなった場合、孤独になった男性の死亡率が2.4倍に増える一方で、女性は独身になってもあまり変化がないという研究結果があります。家にいるパートナーの死が大きな精神的ダメージになる男性に対し、女性はパートナー以外にも気軽に話せる相手が多いため、孤独を感じにくいのです。つまり、女性にとっては話せる友人の数のほうが重要なのです」

とは言っても、いたずらに人とつながることは、「孤独感を大きくすることにもつながる」と樺沢氏。

その典型例がSNSだ。アンケート結果によると、1日のSNS利用時間が0時間で「孤独を感じる」と答えた人の割合が64%だったのに対し、1~2時間と答えた人は87%。つまりSNSの利用時間が長い人ほど孤独を感じやすいのだ。

SNSの利用は、幸福度に大きく影響

「考えられる原因は2つです。1つ目は、SNSを使っている時間が長い人は、1人の時間が寂しいと思っている可能性が高いこと。SNSを開くと、友人の投稿が溢れています。さらに自分が投稿すれば『いいね』やコメントなどの反応が返ってくる。SNSは、そうした寂しさを埋め合わせる存在になるため、頻繁に開いてしまうのではないでしょうか。2つ目の原因は、SNSを長時間開く人ほど現実社会が充実していないから。人と会っている時間にSNSを見る人は少ないはずです。今、目の前に一緒に過ごす相手がいる人は自然とSNSを開く時間が減るのです」

また、SNSの利用時間は幸福度にも大きな影響を与える。

「ある調査結果によると、SNSの利用時間が長い人ほど幸福度が下がるというデータもあります。つまり、幸福度という点でも、SNSの長時間利用はよくないのです」

その要因としては、他人のいわゆる「リア充」投稿を見て疎外感を持ったり、逆に自身のリアルが充実していないから、結果的にSNSの利用時間が増えてしまったりすることが考えられるのだという。

では、ネット上ではなく、リアルの対人関係と孤独感にはどのような関係があるのか。例えば、なんでも相談できる友人がいれば、孤独感は薄れるのだろうか。