「ケンタッキー=特別な日の食べ物」が足かせに

この劇的な好転の理由は、「ケンタッキーは安い」というイメージの定着に成功したことによる。

2019年クリスマス向けの「パーティバーレル オリジナル」イメージ(写真=ケンタッキーフライドチキンプレスリリースより)

かつてケンタッキーには、価格が高いというイメージが付きまとっていた。それが一因となって、「特別な日に食べるもの」と思われていた。特にクリスマスの食べ物というイメージが強いだろう。実際、クリスマス時期の売り上げは極端に大きく、昨年は12月21~25日の5日間だけで年売上高の約6%に当たる69億円を売り上げている。だが一方で、そのイメージが普段使いの需要の取り込みを阻み、業績低迷につながっていた。

そこでKFCはクリスマスなど「ハレの日」の需要に頼らず、お得感を強く打ち出す戦略に舵を切ることで、業績の回復を図った。

この方向性のもとにさまざまな打ち出しを行う中で、特に大きな役割を果たしたのが「500円ランチ」だ。これは複数の商品をセットにして500円(税込み、以下同)に値下げするもので、昨年7月23日~9月5日に、オリジナルチキン1ピースにビスケット、カーネリングポテト(Sサイズ)、ドリンク(同)がセットになった「Sランチ」を500円ランチとしてランチタイム限定で販売。それぞれ単品で注文すると合計金額は920円になるものを、500円という安さで売り出したのだ。

500円ランチ販売月は売り上げが大幅プラスに

この500円ランチが、反転攻勢の狼煙となった。発売前月に当たる18年6月まで、9カ月連続で既存店売上高が前年割れと、苦境が続いていた。マイナス幅も小さくなく、17年12月を除いて各月3~7%の大幅減となっていた。ところが、同商品の販売を開始した7月は9.0%増と大幅プラスとなり、翌8月は15.4%増と記録的な伸びを見せた。販売が終了した9月も3.3%増だった。500円ランチが大きな貢献を果たしたことがよくわかる。

今年の1月9日~2月28日にも同じSランチを売り出し、1月が5.3%増、2月が18.3%増とそれぞれ大きく伸びた。4月10日~5月14日にもSランチを販売した後、間髪を入れず、今度はタコス風サンド「チキンスライダー」とビスケット、ドリンク(Sサイズ)がセットになった「チキンスライダーセット」を500円ランチとして販売(5月15日~6月11日)。これらがヒットし、既存店売上高は4月が15.1%増、5月が16.5%増、6月が24.1%増とそれぞれ大きく伸びた。