咽頭ガンに注目が集まった。元大阪府知事の横山ノックさんが咽頭ガンで、07年5月に亡くなったからである。
ガンはどのガンでも早期発見、早期治療が基本だが、とりわけ咽頭ガンはそれが大きなポイントとなる。場所が場所だから、である。
咽頭はのどで、食事と呼吸と声に関係する。進行ガンで治療をしたのでは生命はとりとめても、QOL(生活の質)を大きく落としかねない。
咽頭部をより詳しく紹介すると、咽頭は上咽頭、中咽頭、下咽頭の3つに分類されている。鼻の奥の突き当たりが上咽頭。中咽頭は口を開けたときに俗に“のどちんこ”といわれる口蓋垂(こうがいすい)の奥に見える部分。そして、下咽頭は舌の付け根から食道の入り口までである。
咽頭は縦に長い器官だけに、ガンの性質も異なる。日本人に多いのは中・下咽頭ガンで、酒・タバコに大きく関係している。一方、上咽頭ガンは中国、東南アジアの人々に多く、ある種のウイルスが関係しているとも、また食習慣、遺伝とも関係があるといわれている。
いずれも男性のほうが4~5倍多く発症しているものの、下咽頭の輪状後部(りんじようこうぶ)にできるガンに関しては、50代以降の鉄欠乏性貧血の女性に多いという特徴がある。輪状後部とは、空気の通り道である喉頭とその後ろにある下咽頭の間には壁があるが、その壁の上部部分である。
QOLを落とさないために、早期発見をする場合、先入観にとらわれないほうがよい。咽頭ガンというと、多くの人は、「食べ物の通り道なので、物が飲み込みにくいなど、症状ですぐに気付く」と思い込んでいる。が、そうは問屋が卸さない。早期にはまったく症状がないのである。
「物をスッと飲み込めない」「のどに魚の骨がささったような違和感がある」「物を飲み込んだときに引っかかる感じがする」……この時点ですでに進行ガン。
さらに進むと、ガンの表面が潰瘍化し、物を飲み込んだときに痛みが生じる。のどの粘膜には、さまざまな神経が走っており、耳の神経ともつながっている。そのため、「耳への放散痛」という症状にもなる。
このほか、声帯を動かす神経や筋肉に影響すると「声がかすれる」。リンパ節に転移していると頚部リンパ節が腫れて、触れるとグリグリ感がある。
このように症状で発見できると思っていると進行ガンなので、年に1回の内視鏡検査が大事。
食道・胃の内視鏡検査の折、「咽頭ガンが気になるので、咽頭もよく見てください」と訴えておくと、しっかりチェックしてくれる。それを言わないと、内視鏡をスーッと抜いてしまい、見逃されやすいのである。
食生活のワンポイント
咽頭ガンは酒とタバコに大きく関係しているので、男性に多いという特徴がある。
酒は節酒、タバコは禁煙。これが、咽頭ガンのリスクをグンと低下させる方法である。
(1)節酒
禁酒ではなく節酒なのは、日本酒1合程度の飲酒は、免疫力をあげるのに役立つからである。酒は「酒指数」でリスクを知ろう。日本酒に換算して「1日に飲む合数」 ×「飲んだ年数」。1日2合 (ビール大ビン2本) を30年飲んできた人は2×30で60。酒指数は60を超えると高リスクグループとなる。
(2)禁煙
タバコには「ブリンクマン指数」がある。「1日にタバコを吸う本数」×「喫煙年数」で出てくる。1日20本を30年吸い続けてきた人は、20×30で600になる。タバコは600を超えると高リスクグループとなる。
日本頭頚部癌学会(岸本誠司理事長)は、2006年に「禁煙・節酒宣言」を行った。