「形式上のことだけをとらえて批判するのは無意味」
・ただし、長期停電という特殊災害に対して、特別な対応を取る必要があり、各部署から人員を引き抜くなど、特別な動員体制で災害対応に当たってきました。また、倒木などを処理し、いち早く道路を復旧させなければならない建設局や、傷病者・熱中症患者を救急搬送するなどの役割を担う消防局などは、非常事態モードで対応に当たりました。
・翌9月10日には、停電の長期化を予想し、給水活動の拡大、物資が不足する地域へ移動販売車を巡回するための(千葉市内に本社を構える流通大手)イオンへの依頼、電源車を確保するためのNTT本社への依頼、入浴支援のための市施設のお風呂の無料開放、停電地域での熱中症を予防するためバスを臨時移動避難所として借り上げるなどの指示を矢継ぎ早に行い、マニュアルには規定していないものの「特殊災害」ととらえ、再度、警戒本部を対策本部に移行することとしました。ちなみにこの移行も形式的なもので人員体制として何が変わったわけでもありません。
こうした詳細を明らかにしたうえで、熊谷氏は訴える。
社会をよくする仲間として、具体的な提言や問題喚起をしてほしい
「私たち千葉市の具体的な行動に問題や改善すべき点があるなら、いくら批判してくれても結構です。しかし『災害対策本部か、災害警戒本部か』という形式上のことだけをとらえて批判するのは、現場で頑張っている職員たちの士気を下げるだけであり無意味です」
「一連の台風・豪雨災害に際して、ほとんどの報道は私たちの助けになってくれましたが、残念なことに単に足を引っ張るだけの報道があったことも事実です。私は報道に携わるみなさんにも、社会をともによくしていく仲間として具体的な提言や問題喚起をしてほしいと思っています。また、不備だけをあげつらうのではなく、私たちの社会が過去を教訓に進歩していることについても、もっと報じてほしいと思います」
「たとえば災害対応の面では、1995年の阪神・淡路大震災以来の制度づくりによって、行政は当時よりも格段にスピーディな対応ができるようになりました。台風15号のときも経済産業省や国土交通省の職員がすぐに現地入りしてくれ、必要な対策を講じるために動いてくれました。そういった側面についても多くの人に知ってもらうことが、社会をよりよくすることにつながるのではないでしょうか」