夜にパソコンを使う場合は「ブルーライトカット」を

ハーバード大学の研究で夜に100ルクス(一般的な居間の明るさが300ルクス)の光を浴びただけで睡眠ホルモン「メラトニン」が88%減少したという報告もある。体内時計がしっかり働かないと、眠りにもつきにくいということだ。

リズムを整えるためにできることは、夜に「光を浴びない」こと。自宅にいるなら使用する部屋のみ照明を使うなど、夜はできる限り照明を絞ろう。また夕方以降は「暖色系の光」にしたほうが体内時計を動かしにくいことが証明されている。昼も夜も使うリビングなどでは、一つの照明で光の強さや色を変えられるツーウエイタイプにするのもいい。1万円くらいから購入できる。

写真=iStock.com/Toa55
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そして夜にどうしてもパソコンなどの電子機器を使用する場合は、ブルーライトカットを使用したい。ブルーライトカットの電球も販売されているし、そういった効果のあるものをパソコンに貼ってもOKだ。中村准教授らの研究でブルーライトカットを施した照明は、体内時計に与える影響が半分程度であることがマウスを使った実験で示されている。

正しいリズムが刻めないと仕事のパフォーマンスも落ちる

一方で日中の照明は“明るい”ものを。明るく感じる光には基本的にブルーライトが多く含まれる。その青い光は夜に浴びれば毒になるが、日中に浴びれば薬となって、体内時計がきれいなリズムを描きやすくなる。

図表=Nagai et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci 60(2019)より改変
ブルーライトカットしたLEDは、白色LEDと比較して体内時計中枢(脳・視交叉上核)における時計遺伝子Per2発現量を抑える(※)。

目の奥にブルーライトが透過する率を20代で100とすると、40代ではその半分といわれる。そのため、年をとるほど体内時計の活性が弱まりリズムが乱れやすい。日中はブルーライトを浴びる、夜は浴びない(もしくは暖色系の光かブルーライトカット)と区別し、メリハリのある生活を送ろう。さらに青い光とは照明ではなく、「外の太陽光(に含まれるブルーライト)」が、最も効果がある。

正しいリズムが刻めないと、不健康になるだけでなく、パフォーマンスも確実に落ちる。興味深い研究を紹介しよう。少し古いが1995年に科学雑誌『Nature』に掲載された論文である。

※グラフはそれぞれの照明環境(照明なし、10ルクスの白色LED、10ルクスのブルーライトカットLED)に30分間、マウスをおき、その後、3時間後、6時間後に視交叉上核における時計遺伝子発現量を計測した結果。3時間後をみるとブルーライトカットLEDは照明なしと同じレベルにしか時計遺伝子が上昇しない。すなわち、ブルーライトカットは体内時計の針を動かしにくい。