※本稿はプリヤ・パーカー著・関美和訳『最高の集い方 記憶に残る体験をデザインする』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
参加者の振る舞いを変えてしまう「場」の力
「フランス人と古城で会議を開くな。フランス人が図に乗って、自分たちが万能だと勘違いしてしまうから」
これがいわゆる「古城の法則」といわれるものだ。目的がはっきりと決まった集まりでは、望ましい振る舞いを増やし、望ましくない振る舞いを減らす必要がある。グループの絆を強めることが目的なら、相手の意見を聞く姿勢を増やし、批判的な態度は減らした方がいい。
古くさいアイデアや考え方から抜け出すことが目的なら、逆の方がいいかもしれない。参加者の振る舞いに大きな影響を与えるのが、会場の選択だ。
賢い主催者なら、望ましい行動を引き出し、望ましくない行動を抑えるような会場を選ぶ。この「古城の法則」を知らなかったある銀行家は、大金を儲け損なった。そのうえ古城を貸切にするために莫大なお金を使うことになってしまった。
「死ぬ日までずっと、あの場所のせいで案件が流れたことを悔やみ続けるだろう」と言うのは、今はベイエリアに住む投資家のクリス・ヴァレラスだ。2001年、ヴァレラスはシティグループのマネージングディレクターとして、テクノロジーグループを率いていた。ヴァレラスのチームは、ニュージャージーに本社のある通信会社、ルーセントのアドバイザーとなり、フランスの巨大企業アルカテルとの合併交渉に臨むことになった。200億ドルを超える超大型案件だ。