もちろん、ライバルメーカーも画面サイズ別に製品を揃えている。だが、ほとんどのメーカーは20型以上から50型未満の市場で勝負している。
「売れ筋は30型台のテレビですが、東芝もこのサイズに力を入れています。しかし、注目すべきは20インチ未満の市場です。各社が薄型テレビの大画面化を進めてきた結果、手薄になった小型市場できちんと需要を掘り起こしているんです。家のリビングに大画面テレビが普及してきた。自分の部屋で見る2台目、3台目は小型サイズで十分という需要に見事に対応したということです」(道越氏)
加えて年末商戦以降、東芝は販売価格を引き下げている。
「地デジ化するので、とりあえずテレビを買おうという購買層の基準は“価格”です。東芝は、こうしたベーシックなニーズにも対応しています」(道越氏)
東芝は、安いテレビばかりを売っているわけではない。1台100万円の価格で話題をさらった高性能・高機能テレビ「セルレグザ」もある。
低価格と高価格を組み合わせることで、幅広い顧客に対応する。「セルレグザ」で養った技術を普及価格帯のテレビに応用すれば、顧客の「安かろう、悪かろう」の不安をなくすこともできる。そこには、非常に巧みなアソートメントがあるのだ。
品揃えを増やすことは、開発や生産コストの上昇要因になる。東芝は、液晶パネル製造から撤退し、電子機器の受託製造サービス(EMS)を活用した水平分業体制を整えている。画質関連などの技術は独自開発するが、多くを外部調達にすることでコストを削減している。こうして東芝は、薄型テレビ市場でシェアを高めてきたのだ。