副業や兼業をする人が増えている。都内では「ウーバーイーツ」の配達員を頻繁にみかける。政府もそうした副業や兼業を後押しする。だが個人事業主としての副業は会社員に比べて税金面では不利だ。中央大学法科大学院の森信茂樹特任教授は「会社員は税制で優遇されている。副業や兼業を本格的に増やすのであれば制度改革が必要だ」という——。
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会社員のような働き方をする個人事業主が増えている

ウーバーイーツの配達員の労働環境が問題になっている。配達員は雇用契約に基づく社員ではないので、けがをしても労災は認められず、失業保険も適用されない。そこで、「労働組合」を結成して労働環境の改善を求めるという動きが始まったという。

実は税制にも同じような問題がある。

4月1日から、「働き方改革関連法」の一部が実施された。わが国の代名詞ともいえる長時間労働の是正や、正規・非正規労働者の格差の縮小・改善などを目的として労働法制全般を見直す、極めて大きな改革である。

働き方の改革に伴い、副業・兼業が拡大したり、ネットを経由したクラウドワーカーも増大したりしている。農林漁業従事者、生産工程従事者、小売り・卸売り店主といった「伝統的自営業者」から、建築技術者、SE、保険代理人・外交員など、サラリーマンに近い働き方をする「雇用的自営業者」へのシフトが始まりつつある。

一方わが国の税制や社会保障制度は、基本的に雇用形態の相違によってことなる制度に構築されており、サラリーマンや公務員(被用者)か自営業者かで大きく異なる制度の適用となっている。

働き方改革で、ウーバーイーツの配達員のように、被用者なのか自営業者なのか区別がはっきりしない労働者が増えてくると、このような制度の相違が大きな問題となってくる。これは、欧米でも、「ギグ・エコノミー」(単発で契約をして働く労働者で成り立つ経済)という範疇はんちゅうで取り上げられ、雇用形態の違いで不公平感が出ないような制度の構築や、さらには申告漏れなどの「タックス・ギャップ」を防ぐという観点からも、大きな議論が行われている問題である。