日本代表が躍進を遂げられた根本的な要因とは
もともとラグビーは、金銭や物品の授受を禁じたアマチュアのスポーツだった。しかし海外では1990年代前半からプロ化を進める国が増えはじめた。アマチュアリズム堅持を訴えた日本ラグビー界が、海外の潮流にあらがえきれずにプロ化に踏み切ったのは、2000年のこと。いまの日本代表には、会社員として働きながらプレーする選手と、チームとプロ契約を交わした選手が混在している。
またラグビーはケガのリスクをともなうハードなスポーツであるため、プロスポーツとして収益を上げるのは簡単ではない。選手のコンディションや故障のリスクを考えると、試合は週に1回が限界だ。
プロ化の遅れに加え、興行収入だけでチームを運営する難しさが、日当1万円の要因であり、長年日本のラグビーが抱える課題だった。
では、そうした環境のなか、なぜ日本代表は躍進を遂げ、国民から応援される存在になりえたのか。
そのきっかけのひとつが、2011年、エディ・ジョーンズのHC就任だった。
「かつては日本代表のプライオリティが低かった」
結果は数字にあらわれている。2011年大会まで日本代表のW杯通算戦績は1勝21敗2分け。しかし2015年の前回大会と、今回大会の予選プール終了までを合わせると、日本代表は7勝1敗。8試合中、1試合しか負けていないのである。
変わったのは戦い方だけではない。重要だったのは「意識改革」だった。日本代表はなぜ存在するのか。なんのために勝つのか……。エディジャパン発足直後、キャプテンに指名された廣瀬俊朗を中心に、五郎丸歩、リーチマイケルらリーダーたちは徹底的に話し合った。廣瀬はこう解説する。
「ぼくたちは、憧れの存在になるために勝ちたいと考えました。日本代表に対する愛着が選手だけでなく、ファンの人たちも含めて低かった気がしていました。ファンの方々も、記憶に残る試合といえば、いついつの早明戦とか、神戸製鋼V7の話題になる。まずは代表を憧れの存在にしなければ、と」
日本代表は、日本ラグビーにかかわるすべての人の憧れであり、目標なのではないかと訝しく思う人もいるだろう。
しかし元日本代表選手に話を聞くと、「かつては日本代表のプライオリティが低かった」という証言が少なくない。