アメリカ人が寄付・献金をよく行うもう一つの理由は、受け手がしっかりした受け皿を用意していることである。インターネット経由で政治家にカネを送付するシステムはすでに90年代から使われていた。

2000年の大統領選で、ブッシュ候補(当時)と相対したジョン・マケイン氏は、インターネットだけで約800万ドル(約7億2000万円)を集めた。当時としては画期的なことだった。結果的にはマケイン氏はブッシュ候補に予備選で敗れ、08年の選挙ではオバマ氏に敗れるが、ネット選挙の初期の効率的な活用者だった。

ネット献金を本流に押し上げたのは、04年大統領選挙に民主党から出馬したハワード・ディーン氏の選挙対策本部長だったジョー・トリピという男である。彼はインターネットを資金収集の柱にした。ディーンは04年初頭まで民主党レースのトップを走っていたが、その後失速して選挙戦から退く。けれども、将来の資金収集法を確立した点で一条の光があたる。

彼の貢献はまたブログをつかって情報を拡散させた点にもある。若者にたいし、参加すれば自分たちでさえも政治に影響力を与えられると思わせた。5ドルでも寄付をしてくださいという呼びかけは確実に功を奏した。ディーン氏の選挙事務所に足を運んで驚かされたのは、ネット献金運営の主導権を握っていたのが若者だったことである。5ドルでは献金額として恥ずかしいいという思いは彼らの中にはない。

07年になると、ヒラリー氏が1週間で100万ドル(約9000万円)以上をインターネットで集金するという荒業をやってのけた。だが08年になると、オバマ氏はそれまでのすべての献金記録を塗り替えてしまう。

選挙中、オバマ氏のホームページにいくと、「献金してください(Donate)」という赤字が目にとまった。そこをクリックすると、クレジットカードを使って10ドル(約900円)から4600ドル(約41万4000円)までを個人献金できるようなデザインのページが表れた。