日本のオリジナル技術だけに全体の約3分の2を占めて圧倒的な存在感を示すが、これを年次の推移で追っていくと別の側面が見えてくる。初めのうちこそ日本国籍が最も多かったものの、途中から韓国籍が急増し、近年は中国籍が右肩上がりで増加している。日本が市場シェアで韓国、中国に追い上げられているのと同様に、特許出願でも彼らの足音がますます高まりつつある。

現に、ソニーを先兵に初めは快進撃を続けた日本のリチウムイオン電池だったが、韓国勢の猛追を受けてここ数年大きくシェアを落としてきた。10年における世界シェアで見ると、日本は三洋電機、パナソニック、ソニー3社で37.2%なのに対し、韓国はサムスンSDI、LG化学2社が34.1%にのぼり、その差はわずか3%にまで迫ってきている。

次世代電池の開発が産学連携で進行中

ところで、発明からまだ20年に満たないリチウムイオン電池はこれからまだまだ技術革新の余地があると期待する声が強いが、果たして日本のオリジナル技術が世界制覇に向けてさらなる進化を続けることは可能なのだろうか。

小久見善八●京都大学名誉教授・特任教授。74年京都大学大学院工学研究科博士課程修了。京都大学助手、助教授、教授を経て、2009年より現職。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)革新型蓄電池先端科学基礎研究事業のプロジェクトリーダーとして活躍。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が音頭を取り、京都大学で進められている「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業」がその解の一つになる。

これは、09年10月に発足した7年間のプロジェクトで、国が210億円を投じて従来のリチウムイオン電池の3倍以上の性能を目指すが、それはガソリン車並みの航続距離が得られるEV用の革新的な電池を意味する。

参加メンバーは、トヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車、三洋電機、パナソニック、日立製作所、GSユアサなど12社と、京大など14の研究機関。このプロジェクトのリーダーを務めるのが、電気化学専攻で電池研究の第一人者、小久見善八・京大特任教授である。

「バッテリーは半導体に比べて、設備投資は少なくて済むし、材料も製造装置もどこからでも買ってこられます。技術では先行したとはいえ、日本のメリットはほとんどないといっていいのが現状です。そこに日本が競争力をつけて製品を差別化していくには、電池の中でどんな化学反応が起きているのか、基礎からの研究を通じて新たな世界を切り拓いていくしかないという考えで、このプロジェクトがオールジャパンでスタートしたのです」