財産の半分を持っていかれる不安から子どもが反対
では、あえて法律婚を選ばないのは、どういうケースだろうか。理由を整理してみると、ほぼ次の3点に集約される。
①財産の問題
現在の遺産相続の制度だと、子どもがいる場合、配偶者の相続権は2分の1、子どもたちが残りの2分の1となる。シニア婚の場合、結婚してそう年数がたたないうちにどちらかが亡くなる可能性は、若い世代の結婚より当然高くなる。子どもたちの立場に立てば、晩年になって結婚した相手に自分たちの取り分を取られてしまう、という感覚が生じるのも致し方ない。それが結婚に反対する主たる理由となる場合もある。
また2018年の相続法改正では、「配偶者居住権」が創設された。これにより、たとえば夫が所有するマンションに夫婦で暮らしていた場合、夫が亡くなり、子どもたちが不動産の所有権を相続したとしても、妻は夫が所有していた家に住み続けることができる。子どもにしてみたら、不動産を売って現金化することもできない、ということになる。
こうした理由から、子どもたちを納得させる方法のひとつとして、入籍をしない関係を選ぶケースは少なくない。もちろんいずれのケースも、子どもたちが納得する遺言公正証書を作成すれば問題は回避できる。とはいえ事実婚のほうが子どもを説得しやすい、あるいは説得の必要が生じないと考える人が多いのも事実だ。
多額の遺族年金をもらい続けるためあえて入籍しない
②夫と死別している
夫と死別している女性の場合、遺族年金をもらっているケースが多い。遺族年金とは、生計の担い手である被保険者が死亡した際、国民年金・厚生年金保険や各種共済組合などから一定の要件を満たす遺族に給付される年金のことだ。サラリーマンと専業主婦という家族形態が一般的だった時代、夫に先立たれた妻のなかには、かなりの額の遺族年金が支給されている人もいる。
ところが再婚すると遺族年金をもらえなくなり、自分の国民年金のみとなる。この差はかなり大きい。そこで夫と死別している女性のなかには、パートナーはほしいけれど、法律婚はしたくないという人もいる。