「日本ラグビーを変える」という目的があった

——廣瀬さんがラグビーを通して、たくさんの海外出身の選手や関係者と接した経験から生まれた発想といえそうですね。

撮影=尾藤能暢

違った価値観や文化を持つ海外の人に対して、こちらから歩みよる大切さを感じたきっかけは高校時代です。高校日本代表のキャプテンとしてフランスに遠征したのですが、現地の関係者やお世話になった人に一言「ボンジュール」とあいさつすると、みんなとても喜んでくれたのです。

それ自体はささいな体験かもしれませんが、その経験が社会人になって生きた。ぼくがプレーしていた東芝ブレイブルーパスや、日本代表に初参加する海外出身の選手に、各国の「ヘイ、ブラザー」みたいな砕けた言い方であいさつするようになりました。ニュージーランドなら「ハイ、ブロー」で、サモアが「ハイ、ウソ」。そしてトンガは「ハイ、トコ」……。ほんのちょっとしたことですが、このチームはみんなに対してオープンなんですよ、と知ってほしかったんです。

——同じチームで活動するなかで生じる価値観や考え方の違いはどのように乗り越えていったんですか?

繰り返しになりますが、目的を共有することですね。ぼくらのときの日本代表でいえば、「日本ラグビーを変える」という目的がありました。

「家族の存在があってこそ」という海外選手の感覚

たとえば、ニュージーランドやオーストラリアの選手は家族を第一に考える。家族がちょっと体調を崩したと連絡が来れば、日本代表の合宿中でもすぐに帰宅する。

——日本人なら合宿を優先させるケースが多いでしょうね。

おっしゃるように、従来の日本人の感覚なら代表に選ばれたんだからラグビーを優先すべきだと考えるかもしれません。でも彼らは、ラグビーはもちろん大切だけど、家族の存在があってこそ、プレーや練習に集中できるという感覚なんです。

自分ならどうするのか。改めて問いかけました。