▼業界と会社の10年後を見通す経営書
基本に立ち返るときに読む本には「わかりやすさ」も大事です
自立には「きびしさが必要」
1987(昭和62)年、国鉄が分割・民営化されたときの哲学は「自主自立」でした。私が松下幸之助『道をひらく』(PHP研究所)を読んだのは、国鉄がJRに変わった後のことです。そこでは「自主自立」について、「獅子はわが子をわざと谷底につきおとす」というたとえを使って、「自立するためには『きびしさ』が必要なのだ」と述べられており、深く感銘を受けました。
『道をひらく』では、私たち経営者にとって基本中の基本ともいうべき、心の持ち方や物の考え方について、1テーマごとに平易な言葉で書かれています。読み直すと、いつも何かしら心に響いてくる言葉があります。
人はつい易きに流れるもので、しなくてはいけない決断も先延ばしにしたりします。
『道をひらく』には、そうしたありがちな人の態度について「あれこれとまどい、思い悩んでも、とまどい悩むだけではただ立ちすくむだけ」「進むもよし、とどまるもよし。要はまず断を下すことである」と戒める言葉もあれば、「志を立てよう」と、高い志をもって人生を切り拓いていくことを勧める言葉もあります。