生活困窮者を支援している「認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい」は、年間約4000件もの相談を受け、時には公的な制度を使えるように役所の窓口に同行している。その理事長の大西連氏が、生活に苦しむ人たちの人生に寄り添う中で見えてきた、「貧困」の現場とは——。

※本稿は、大西連『絶望しないための貧困学』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

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ある日突然獄中から届いた一通の手紙

クロダさんから初めて手紙をもらったのはおよそ半年前。2011年9月のことだった。

彼はその時、日本の北端近くにある刑務所に入っていた。罪状は、覚せい剤の所持および使用。元暴力団員で前科もたくさんあった。彼は当時、出所を控えていたのだが、当然、僕と面識があるわけではなかった。

クロダさんが僕に手紙を送ってきたのには理由があった。同じ罪状で捕まっていた彼の舎弟の元妻が、シャバに出てからの生活に困っていて、たまたま僕が生活保護の申請同行を手伝ったのである。そんな縁もあり、彼女と親交のあったクロダさんは僕に手紙をよこしてきたのだった。

刑務所から手紙をもらったのは初めてだったので、最初は戸惑った。便箋の一枚一枚に検閲済みの証である桜のマークが押されていた。まるで刑事ドラマの世界の話のようで、あまり現実感がなかったのを覚えている。

手紙には、簡潔にこれまでの自分の人生と、罪を犯した理由、そして、暴力団から脱会し生活を再建したいのだが、住む場所どころか出所後に行くあてもないことなどがつづられていた。

その後、何度か文通をし、出所後、直接話を聞くことになった。