文在寅大統領と手を取り合う安倍首相
なお、安倍晋三首相も、文在寅大統領も、トランプ米大統領も、そして読者のみなさんも、もし仮に5万年前にさかのぼれるタイムマシーンに乗れたとしたら、先祖に会うには例外なく全員がアフリカまで足を運ぶ必要がある。生きてアフリカにたどり着くべく、安倍首相と文大統領は、一緒に狩りをし、峠を飛び越えるときには手を取り合い、助け合うことになるだろう。プーチン露大統領とトランプ氏が手を取り合うシーンはなんだか想像に難くない。
遺伝子という視点でこの世を俯瞰したとき、われわれ全員が切っても切れない兄弟姉妹なのである。そういえば最近、米国のテレビ番組で白人至上主義者のリーダーに遺伝子テストを行ったところ、彼の14%の血統がアフリカからの由来であったと判明した。彼のはにかみ具合が印象的だった。
切っても切れないのものをあえて「切ろう」と本気で頑張るところにわれわれ人類の滑稽さが垣間見える。「ホワイト国除外」というフレーズがメディアをにぎわせた。韓国ではユニクロら日系企業への不買運動もおこり、ソウル市内では反日スローガンが「No Japan」であるべきか「No Abe」なのか若干騒々しい。
上皇陛下「韓国にゆかりを感じる」
これをつきつめると滑稽だ。過去にTOYOTAを所有・運転していた韓国人は自分自身をどう「断罪」するのか。有田焼は豊臣秀吉による朝鮮出兵の際連れてこられた朝鮮人陶工を陶祖として発祥したもので、日本にはその陶祖を祭神とする神社まであるが、では有田焼は日本人と韓国人のどっちが「不買」し「排斥」すべきだろうか。
朝鮮半島なしに有田焼はあり得ず、同時に、有田焼をオランダ商に密輸して稼いだ資金がなければ、幕末に会津若松城を陥落させたアームストロング砲も、その後函館五稜郭で討幕戦を終わらせた佐賀の軍艦も買えなかったことも、動かぬ史実だ。宮内庁のウェブサイトに掲載されている上皇陛下御発言によると、桓武天皇の生母が百済王の子孫と「続日本紀(しょくにほんぎ)」に記されているので、韓国にゆかりをお感じであるという。
冒頭にでてきた私の大学時代の親友T氏が、里帰りをして突然悟ったように、歴史を過去数カ月や数十年でとらえず、世間をスマホを通してのみ理解しようともせず、絶対に嘘も歪曲も「ポジショントーク」もしない遺伝的ルーツというレンズから見わたしてみる。その時、われわれは互いにいがみ合うには生態的ルーツを共有しすぎ、経済活動を依存しすぎており、「国家」や「民族」というくくりがどれほど機能不全かを立証できるツールまで存在することが、よくわかる。