だから、彼らはデフレであっても恐るべきことに平然と消費税を増税する。その結果、日本は深刻なデフレになっている。その一方で、カナダやイギリスはリーマンショック前後に、逆に消費税を減税する、という至って理性的な対応を取っている。日本も、こうした当たり前の対応が取れる国にしなければなりません。
「借金は全部返せ」という強迫観念が利用されている
90年代に入るまでの日本経済は、経済企画庁や建設省などが投資を行い、それを通して実際に成長し続けていました。しかし財政緊縮派が強くなった90年以降は、財務省の緊縮の圧力が強くなり、その結果、投資が先細りとなり、経済産業省や官邸などが主導する「構造改革」で成長しようという路線に変わりました。
つまり、財務省が「カネはない。経済成長したいならカネを使わずに何とか適当にやれ」という態度を取ったがゆえに、官邸を中心として編み出したのが、構造改革路線だったのです。デフレの日本が、投資せずに成長するなんて錬金術のようなもので、事実上不可能。構造改革は、緊縮財政の鬼っ子で、いくらやっても景気は良くなりません。
公共事業などへの税金の投入を控えて国庫の黒字化を図る「緊縮財政」派は、80年代、90年代は世界各国の政府を支配していましたが、リーマンショック以降に空気が変わり、積極的に税金を投入しないと経済は停滞するという「積極財政」の認識が広がりました。とてつもない積極財政でとてつもない成長を遂げた中国が、世界中に反省を促したのです。
米国は民主・共和両党がそう。欧州では両派が拮抗していますが、オランダ、スウェーデン、ポルトガルで積極財政によって経済成長率を上げ、最終的に財政赤字を減らす事例が起きています。
しかし、安倍内閣は違います。13年に大型補正予算を組んだため、積極財政のイメージがあるかもしれませんが、実は、歴史に名を残すほどの激しい緊縮財政を行っているのが実態なのです。消費増税を行い、公共事業関係費を民主党政権時よりも縮小させ、科学技術投資額も縮小させ、財政赤字を30兆円以上縮小させた。
財政赤字の縮小は一見いいことのようですが、逆にいうと、それは貨幣を吸収し、国民の所得を減らしたということ。だから、財政赤字の大幅縮小は、財務省の大勝利であると同時に、国民経済の大敗北なんです。事実、実質賃金が6%以上も下落した内閣は安倍内閣以外にありません。