さらにこの間接批判も、「制裁は緩和されず、軍事的圧力も続いている」という被害者としてのポーズを北朝鮮が取るためのものにすぎず、彼らはこれで時間稼ぎをしながら着実にミサイル実験等を繰り返し、兵器技術の水準を高めています。いずれは、日本への恫喝も強めてくるでしょう。

いずれにしても、文政権と北朝鮮はズブズブの関係です。国連安全保障理事会の専門家パネルの報告やアメリカ財務省の報告からも明らかなように、韓国は海上で北朝鮮との「瀬取り」による不正輸出などを繰り返し、北朝鮮を裏で支援しています。そのような韓国に対し、日本が輸出管理を厳格化しようとするのは当然です。

韓国は今、国内総生産(GDP)で約100分の1しかない北朝鮮の言いなりになっているように見えます。日本の輸出管理厳格化に反発しつつ、北朝鮮と経済協力して危機を克服しようと主張する文大統領の発言は、日本から見ると意味不明ですが、彼らにとっては民族が共に「悪辣あくらつな日本」と戦うためのよい機会であり、こういう苦しいときこそ、民族統一の理想へと近づいていけると考えているのでしょう。

文大統領は8月15日の「光復節」の式典で、「2045年までに朝鮮半島の和平と統一を目指す」と表明しています。北朝鮮に追従する「文在寅現象」とも呼ぶべき姿は、属国意識の変種症状と言ってよいものかと思います。

明治時代、陸奥宗光は、朝鮮が中国の属国でありながら、属国としての被害者意識がなく、中国や中国文化をあがめることを道徳的使命と感じているとして、「中国と朝鮮は奇妙な宗属関係にある」(陸奥宗光『蹇蹇録』より)と指摘しています。何を言われても北朝鮮への融和的な姿勢を崩さない文大統領は、北朝鮮や主体思想をあがめることを道徳的使命と感じているのかもしれません。陸奥宗光の言葉を借りるなら、北朝鮮と韓国もまた「奇妙な宗属関係にある」と言うべきでしょう。

二股外交で「脱属国」をめざす北朝鮮

一方、金正恩委員長の中国に対する属国意識もなかなかのものです。金委員長は自分が話をするときに、部下にメモを取らせます。自分の指示を聞き漏らすのは許さないということらしく、メモを取らなかった部下を処刑しています。その金委員長が、習近平主席と会談するときは自分でメモを取っています。これは中国に対する恭順の意志の表れです(トランプ大統領の前では金委員長はメモを取りません)。