朝鮮半島にはまず、7世紀に唐の冊封を受けた新羅が半島を統一して以来、千数百年にわたって中国の属国として支配されてきた歴史があります。中国による支配は、日清戦争の講和交渉の末に調印された下関条約(1895年)によって、清が李氏朝鮮に対する宗主権を放棄し、その独立を承認するまで続きました。

しかしその後は日本とロシアが、朝鮮半島の支配権をめぐって対立。日露戦争中から戦後にかけての3次にわたる日韓協約で日本は韓国の保護国化を進め、1910年に「韓国併合に関する条約」によって、日本は韓国を併合しました。第2次大戦で日本が連合国に降伏した後、朝鮮半島は日本の統治下から離脱。38度線から北はソビエト連邦、南はアメリカによる占領統治を経て、1948年に現在の北朝鮮と韓国が誕生しました。

それから70年を経た今も、韓国は歴史的に属国であることを強いられた「被害者の伝統」に、自ら進んで依拠しているようにも見えます。8月1日、韓国の与党「共に民主党」の李仁栄(イ・インヨン)院内代表は、日本の一連の輸出管理強化措置に対し「第2の独立運動となる経済・技術の独立運動に火がつくだろう」と発言しました。国際的なサプライチェーンの中では、国ごとの役割分担があります。それを「属国」的構図としてとらえ、「独立運動」という言葉でナショナリズムをあおる姿勢は、あまり穏当とは言えません。彼らの被害者意識に対して毅然とした態度を取らず、甘やかしてきた日本にも責任はあると思います。

北朝鮮にはひたすら融和的

奇妙なことに文政権は、北朝鮮に対しては自ら進んで「属国」的な態度をしばしば見せています。核開発問題をめぐって国際社会が同国への制裁圧力を高める中、文大統領は輸出規制や開城工業地域の再稼働などの問題で、常に北朝鮮に融和的な態度を取り続けてきました。欧米メディアには金正恩の「エージェント(スパイ要員)」や「スポークスマン(広報担当者)」だなどと言われる始末です(*4、*5)

8月5日に青瓦台で開かれた首席秘書官・補佐官会議で、文大統領は「南北の経済協力によって平和経済が実現すれば、われわれは一気に日本経済に優位に追いつくことができる」と述べました(*6)。北朝鮮に追従する文大統領のホンネが出た形です。

一方、北朝鮮の報道官は8月16日、「韓国当局者とこれ以上話すことはなく、再び対座する気もない」と述べました(*7)。このことから、「文在寅は金正恩からも見放された」ととらえる見方がありますが、そうではないと思います。北朝鮮は米韓軍事演習を行う韓国の名を借りて、アメリカを間接批判しているわけです。文政権との蜜月は一切変わりません。韓国の裏支援がないと、北朝鮮は生きていけないからです。