だが、おしゃれよりも「くらし」が好きと声を大にして言える時代がやってきた。おしゃれはほどほどにして、「ていねいなくらし」をしたい。余った時間は、ユニクロムーブを着て走ったり、ヨガをしたり、グランピングに行きたい。健康であることが何よりも価値を持ち、おしゃれよりも「くらし」の時代だからこそ、ユニクロが正解となったのである。

ユニクロが“見た目勝負”を終わらせた

そして三つ目、最後の理由は、ユニクロのおかげでおしゃれで勝負しなくてよくなったことである。おしゃれが自己表現だった時代は、みな、おしゃれで勝ち負けを競わなければならなかった。DCブランドが好きか、コンサバ・ブランドが好きかの差はあれ、女子大生もOLも主婦もみんなおしゃれで競い合っていたのだ。海外ブランド全盛期も、シャネルかグッチか、ヴィトンかエルメスか、あるいはそのブランドバッグをいくつ持っているかでお互い勝負していたのである。

だが、現在はおしゃれで競い合わなくてもいい。頑張らなくてもいい。そのせいで、「ユニクロがよくない?」とみんなが言い始めてから、ファッション誌はやることがなくなってしまった。今や、どの雑誌にもユニクロがデイリーブランドとして登場し、みんなが毎日ユニクロをコーディネートに取り入れるようになったからである。機能的で、着心地もよく、デザイン的にも配慮されたユニクロがあれば、服はこれで十分である。結果として、ユニクロがおしゃれで勝負する時代を終わらせたと言うことができる。

インスタで生まれた「意識高い」競争

一方で、おしゃれで競う代わりに、人々は「インスタ映え」を競うようになった。ファッションセンスなどという抽象的なものは流行らなくなったのである。それよりも現在は、「見える化」された数値が大切なのだ。フォロワー数。いいねの数。それが新たな勝敗を決めるのである。

人々は、日常を見せるメディアである「インスタ」で、どんな「くらし」をしているか、ライフスタイルを見せるようになった。「くらし」がおしゃれな人が本当のおしゃれと評価されるようになった。「インスタ」で、どれくらい「ていねいなくらし」をしているかを競い合う。おしゃれに代わって「意識の高さ」という目に見えないはずのものを競うようになったのである。

そんな意識の高さを競う人々にとっても、ユニクロは最適なブランドである。ファッションに余計なエネルギーを注がずに、「ていねいなくらし」に邁進まいしんできるのだから。このように、服はほどほどで、「くらし」を大切にしたい今の時代に最も相応しいブランドだからこそ、ユニクロが正解の服になったのである。