大きく成長してきたが、厳しい環境が続く
大きく成長してきたが、厳しい環境が続く

「昔と違い、中国、インド、タイの企業の生産技術が向上し、日本と同じような車をつくれるようになっています。加えてレイバーコストは日本よりはるかに安い。海外に生産拠点をシフトしない限り、生きてはいけないし、国内の生産量は今を100としたら4年後には20ぐらいに減るかもしれません」(田邊)

自動車部品業界に詳しい早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授の小林英夫は、「アジアの部品企業の技術が飛躍的に向上している。日本の自動車メーカーは日本の部品企業を使わなくてもよくなり、商戦に負けて、厳しい状況に追い込まれているのが実情。デンソーやアイシン精機をはじめ何社かは生き残るでしょうが、それ以外は厳しい」と指摘する。

売上構成比は自動車部門が7割/海外比率17%と出遅れる
売上構成比は自動車部門が7割/海外比率17%と出遅れる

11年ユーシンは、中国、タイで新工場を稼働させる計画である。また、ドイツのフォルクスワーゲンの受注を獲得し、11年度にメキシコに新工場を建設し、12年に稼働させる予定。米国とブラジル市場への部品供給をにらんだ布陣だ。ロシアに向けたハンガリーの生産拠点からの部品供給に向けた営業活動も強化する。

同社の現在の海外売上高比率は20%程度。海外事業の強化で数年後にはM&Aも視野に入れながら、現在の売上高を3倍の2000億円に引き上げ、海外売上高比率は70%程度に高める予定だ。

しかし、田邊は77歳と高齢だ。事業を拡大するには外国の自動車メーカーを相手にトップ営業ができなければならない。それが社長公募の最大の理由だ。(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

田邊耕二●社長。1934年生まれ。56年日野自動車入社、61年退社。同年ユーシン入社、65年取締役、76年専務を経て、78年より社長を務める。2006年最高顧問に就任。08年2月に社長に復帰し、現在に至る。社長就任からの33年で売り上げを4倍以上に成長させた。

八重樫永規●社長代行。1962年生まれ。東京大学法学部卒。86年外務省入省。在ロシア大使館総務・政務参事官、在ジュネーブ代表部WTO交渉担当参事官、本省領事局政策課長、在ニューヨーク日本国総領事館総務部長を経て2011年ユーシン入社。

(小川 聡、田辺慎司=撮影)