同意なく子どもを連れて消えた妻

「去年12月、妻に当時5歳の長男と当時3歳の長女を連れ去られました。子どもたちがどこにいるのか伝えるように求めても、知らされることはありません。子どもたちに私を会わせるかどうかは、妻の一存で決まります。

私はDVや不倫をしたわけでもなく、子育ての大半も担ってきました。にもかかわらず、裁判所は連れ去りから8カ月以上がたっても、子どもたちと私が日常生活を過ごすことを認めないのです。このまま生き別れになるのかと思うと、胸が引き裂かれる思いです」

こう話すのは、東京都港区在住で、パイロットとして航空会社に勤務しているAさん(47)だ。Aさんは同じ年齢の妻と8年前に結婚し、長男と長女が生まれた。

しかし、去年12月、妻が2人の子どもを連れて出ていった。子どもたちの居場所は、Aさんにはわからなかった。これは夫婦生活の破綻によって起きる、いわゆる「子どもの連れ去り」だ。

5年半、子育ての大部分を担ってきたのに

Aさんはもともと別の航空会社のパイロットだったが、約15年前、空港に向かうバスにクルーの荷物を積む手伝いをした際に、椎間板を割る大けがをした。労災が認められたが、回復して仕事に戻るまで2年半かかった。このけがが理由で、のちに解雇されている。

当時、前の妻と結婚生活を送っていたが、この大けがが原因で離婚。8年前に裁判が終わり、その直後に同じ高校の同級生だった現在の妻と知り合った。お互いバツイチで、交際が始まると、まもなく再婚した。

再婚後、Aさんは最初は主夫として妻を支えた。約2年がたって長男を授かり、Aさんは子育てを担いながら、可能な時間で保育ルームの仕事をしていた。

長男が2歳になると、今度は長女が生まれた。生活費も必要だったため、以前勤めていた会社の同僚の紹介で別の航空会社にパイロットとして復帰した。子育ての時間が必要だと会社に相談すると、会社は理解を示し、フライトを調整してくれた。

「平日や週末を問わず、家を不在にしていた妻よりも、5年半もの間、子育ての大部分を担っていました」

Aさんは子育てに重点を置いた生活を送っていたと話す。

病院は「警察と児童相談所に通告する」と告げた

問題が起きたのは去年6月だった。長男、長女ともに体調が悪く、病院に連れて行く必要があり、Aさんは妻に相談した。すると妻は仕事に行かなければならないという口ぶりだったが、実際は知人と旅行にいくつもりでいたことがわかった。

Aさんが「いくらなんでもそれはないよ」ととがめると、妻は激怒し、子どもたちが見ている前でAさんの口のあたりをつかんだ。爪が食い込み、Aさんは流血したが、妻はそのまま家を出た。Aさんはそのまま港区内にある病院に子どもたちを連れていくと、「虐待対応チーム」を持つ病院は傷を負っていたAさんに事情を聞き、次のように告げたと言う。

「夫婦であっても子どもの前で暴力を振るうことは、お子さんの心に傷を残します。面前暴力という子どもへの虐待にあたり、児童虐待防止法違反になります。私たちは警察と児童相談所に通告しなければなりません」