妻の遊びをとがめると暴力、突然子どもを連れ去られる

通告されれば妻はもっと怒るだろう、と思ったAさんは、何とか穏便にすませるように病院にお願いした。その結果、今後もAさんと病院が連絡を取り続けることを前提に、児童相談所への「報告」という処置が取られた。この時に病院は「虐待対応記録」の書面を発行している。

Aさんはしばらく時間がたったあと、病院が児童相談所に「報告」したことを妻に話し、反省を求めようとした。すると妻は、「あなたに言われる筋合いはない」「出ていけ」と言い、離婚に向けて弁護士と相談していることを明かした。

その後、妻の希望で双方の母親が同席して、話し合いの場がもたれた。妻はAさんに家から出ていくよう求めたが、Aさんは「子どもと離れて暮らすことは受け入れられない」と主張した。話し合いはまとまらず、妻は同居のまま離婚に向けて調停や裁判を進めることAさんに伝えた。

しかし、同居のままという前提は約1カ月後に破られた。去年12月中旬の午後3時ごろ、Aさんが保育園に迎えに行くと、子どもたちはいなかった。妻がすでに迎えに来たという。普段、妻が迎えに来る時間は、仕事が終わった後の午後6時から8時の間だった。妻と子どもたちがどこにいるのか、Aさんには分からなくなった。子どもたちは妻に連れ去られてしまったのだ。

撮影=田中圭太郎
Aさんは「子どもたちと以前のように暮らせる可能性は限りなく低いと思う」と話す。

警察は「民事不介入」、家裁は「問題なし」

妻は事前に弁護士と相談し、子どもたちと暮らす場所を確保していたことをAさんは悟った。連れ去られる3日前に、義父の命日のため家族全員で妻の実家を訪れていたが、その時には何の話もなかった。子どもたちを連れ去ることを、義母も知っていた可能性がある。

Aさんはすぐに警察署に届け出た。警察官は妻に電話して安否の確認をしたが、妻が弁護士を雇っていることが分かると、警察は「民事不介入」の旨をAさんに告げた。妻や子どもたちがいる住所を教えることはできない、ということだった。

Aさんは司法の力を借りようと、今度は家庭裁判所に共同監護などを求める審判を申し立てた。自分は不倫もDVもしていないし、子育ての大半をやってきたとして、子どもたちを連れ去られる理由はないと主張した。