日本代表がW杯予戦を勝ち進んだ昨年にも同様のフェアを行っていた。その実績があり、今年はさらに規模を大きくして、近畿の店舗にも統一企画を立ち上げたのだ。通常ならば2時間以内に陳列できるところを、7時間かけて売り場をつくった。店舗の理解や応援を巻き込んだ、大々的展開である。昨年の反省も抜かりなく、ポスターや景品などの販促グッズが絶対に不足しないように手配した。
「勝つと負けるとでは大違いです。売り上げが伸びて売り場に活気が出ました。初戦(14日)に合わせて6月12日の土曜日に一気に仕掛けたわけですが、2戦目のオランダ戦まで2週連続の提案をしたんですね。でも翌週が父の日で、どうしてもテーマ性が決まっていた。そこでカメルーンに勝って、大がかりな陳列を継続していただけたんです」
と藤田は言う。
戦前は劣勢が予想されていたし、もし負けていたらファンは意気消沈、購買意欲は萎えたに違いない。売り場縮小の憂き目にも遭っただろう。
その週の売り上げは全店舗で前年比の132%を達成した。
「絶好調すぎて来年の数字が大変です。正直、ここまで徹底してやってくれるのはキリンさんくらい。本部で決まったから展開してくれというのではなく、各店舗の店長の意向も酌んでくれて、お客さまにとって価値の高いいい売り場をつくってくれた」と相原は笑う。
藤田の話や相原との熱気溢れる商談を聞いていると、サッカー日本代表の奮戦に乗じた成功というより、キリンの営業とスーパーの熱意が勝利を呼び込んだのだと思えてくるから不思議だ。