文大統領にとって、反日感情の高まりはまさに好機
ホワイト国からの除外は輸出規制の強化ではない。それは韓国への輸出管理制度を、2004年以前の個別許可制度に戻すことを意味する。個別許可制度の下、輸出手続きには2~3カ月の時間がかかるものとみられる。
それにより、従来に比べて韓国が半導体製造装置など必要なモノを、必要なタイミングで確保することは難しくなるだろう。これは、韓国企業の生産ラインを混乱させ、経済の下押し圧力を高める恐れがある。なお、EUは韓国への輸出優遇を行ってはいない。
韓国ではわが国の対応に関して、日本が輸出規制を強化し経済を混乱させていると、反日感情がエスカレートしている。企業の反発にあい最低賃金の引上げ公約を撤回せざるを得なかった文大統領にとって、反日感情の高まりはまさに好機だ。
文氏は反日姿勢を鮮明にすることで、支持率を回復させている。2020年4月には韓国で総選挙が実施される。文大統領としては、世論の反日感情の高まりに便乗して支持率をさらに高めたい。
経済環境の悪化に伴い反日感情は落ち着く可能性
ただ、この状況がいつまでも続くとは考えづらい。韓国の国民性には「熱しやすく、冷めやすい」という特徴があるといわれる。足許、韓国の世論は文政権の経済運営への"失望"から、一転して反日姿勢の"歓迎"へと急速に傾いている。過去の日韓関係を振り返っても、こうした状況は繰り返されてきた。短期的に韓国の反日感情は高まるだろう。
問題は、先行きの経済のリスクが高まっていると考えられることだ。賃金や雇用環境の悪化が鮮明化すれば、韓国の社会心理は再度、文政権への批判に急転する可能性がある。韓国政府はわが国の輸出管理手続き見直しへの対応策として半導体材料や製造装置の国産化を進めるとしているが、韓国の業界関係者さえ、その対応力に疑問を呈している。4~6月期のサムスン電子の決算を見ても、半導体事業の落ち込みは深刻だ。
その上にホワイト国除外が重なれば、韓国経済はかなり厳しい状況を迎えるだろう。経済環境の悪化に伴い反日感情のテンションは下がる可能性がある。