きちんと情報発信しない政府、メディアの責任は大きい

日本の対露交渉の最大の問題点は、このようなプーチン、ラブロフ、マトビエンコなど各氏の発言が歴史の乱暴な歪曲だと分かるような正確な情報を、国内的にも国際的にもきちんと発信していないことである。

筆者は前述の2012年のプーチン発言の直後に、ロシア語で公表された原文と日本での報道の違いを指摘し、これまでそれを幾度も問題にしてきた。今日の北方領土交渉の行き詰まりは、残念なことに筆者の予想通りの成り行きだが、これは日本の政府やメディア、専門家たちがきちんとした情報発信をしていない結果でもある。このことを考えると、今後の対露政策の在り方は、おのずと明らかになるだろう。

袴田 茂樹(はかまだ・しげき)
新潟県立大学教授
1944年大阪生まれ。東京大学文学部哲学科卒。モスクワ大学大学院に留学後、東京大学大学院国際関係論博士課程満期退学。青山学院大学教授を経て現職。専門は国際政治学。ロシア問題における日本の権威。ユーラシア研究のほか文芸論にも詳しい。『深層の社会主義』(筑摩書房)でサントリー学芸賞を受賞し、現在も同賞選考委員を務める。著書に『プーチンのロシア 法独裁への道』(NTT出版)ほか多数。
(写真=SPUTNIK/時事通信フォト)
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