販売履歴データを使って視聴者ニーズを取り込む

それでは、プライム・ビデオが、従来無かったようなコンテンツ制作に投資して、次々と視聴時間の記録を塗り替えたり、高視聴率を叩き出せたりするのはなぜでしょうか。

元来アマゾンは、マーケットプレイスで得たDVDなどの販売履歴データを保有しています。よって、これまでに蓄積されたこうしたデータを踏まえて、視聴者のニーズを取り込んだドラマや映画の制作が可能になります。その上、CMも入らないため、広告主など第三者の意向を汲み入れる必要もありません。それゆえ、一連の制作プロセスを自社でコントロールできるため、実験的なコンテンツも制作できるというわけです。例えば、日本で2016年にプライム・ビデオオリジナル第1弾作品として配信された『仮面ライダーアマゾンズ』は、特撮物でありながら、現在、セカンドシーズンまで続く人気作となっています。

ツイッターの5倍の額でNFL放映権を獲得

また、プライム・ビデオは、スポーツの放映権獲得にも莫大な投資をしています。2017年には、米国で国民的スポーツとして人気の高いNFL(ナショナルフットボールリーグ)の2017年度シーズンのネット配信による放映権を獲得しています。年間10試合のみのリアルタイム中継契約ですが、現地報道では5000万ドルで落札したと言われています。

前年度に同じ契約条件でツイッターが落札していますが、アマゾンが落札した額はツイッターの約5倍に相当します。配信するのは10試合なので、1試合当たりの放映権料は500万ドルにもなります。地上波やCATVでも放映され、独占配信でないことを考えると、これは破格の投資と言えます。現在、アマゾンは、NFLの他にも、MLB(メジャーリーグベースボール)やNBA(ナショナルバスケットボールアソシエーション)とネット配信による放映権の交渉を進めています。

こうした一連の動きから、アマゾンの「プライム・ビデオなら全ての人気コンテンツが観られる」という全方位戦略が窺えます。オリジナルコンテンツにしても、既存の人気コンテンツにしても、全ての分野でタイトルを網羅することで、顧客のあらゆる関心や興味に応え続けるのです。それは、まさに「カスタマー・オブセッション」の原理を追求しながら、顧客のライフスタイルに入り込むというしたたかな戦略なのです。