「老眼鏡」であえて遠くを見る
人間の視力には波がある。一般に朝起きたときに比べて、夕方は見えにくくなるものだし、パソコンやスマホの操作で手元を見続けていると、目は見えにくくなってくる。
これは、目のピント合わせをする筋肉(毛様体筋)が緊張し続け、疲れてくるからだ。眼球の中には水晶体というレンズがあって、その周りに毛様体筋がある。この筋肉がギューッと縮むことによってレンズが厚くなって手元にピントが合い、逆に遠くにピントを合わせるときは筋肉が緩くなることによってレンズも薄くなる。ちょうど陸上競技で100メートルダッシュを何本も続けると筋肉が疲労し、タイムが次第に落ちてくるように、毛様体筋も使い続ければ疲労し、ピントの調節力が落ち、遠くが見えにくくなる。
そこで、目の筋肉の疲れを取ることで、視力検査で自分の視力における瞬間最大の能力を出すことができる。
まず、検査の1分前にできるのは、目を温める「ホットアイ」だ。温めることで目の血流がよくなり、疲労物質の排出を促すのに役に立つ。同時に、まぶたのふちにある皮脂腺「マイボーム腺」からの油の分泌がよくなるため、涙の質がよくなって見えやすくなる。
ホットアイの基本は「目をつぶって温かいおしぼりを目に載せる」ことだが、市販の「目を温めるシート」を使ってもいい。何もないときは両手を10回ほどこすりあわせて温め、手のひらで目全体を包むように、30秒~1分程度、そっと載せる。
なお、エアコンでガンガンに冷えている室内では空気もかなり乾燥している。目の表面も乾き、目がかすむ原因になる。目を温めるとともに目薬を1滴さすだけでも、結果は違ってくるはずだ。
次に、視力検査の5分前にできることに「雲霧法」がある。日頃からスマホを見る時間の長い人は、手元を見すぎていてピントの調節をする毛様体筋が痙攣、または麻痺した状態になりがちだ。雲霧法は、この使いすぎて痙攣している目の筋肉を緩和させる方法なのだ。