ブルワリー併設のパブ「ブルーパブ」が登場
このようにクラフトビールは、わずか10年のあいだに大きく飛躍したが、近年は新たな展開を見せている。以下では3つの事例を挙げる。
まずは、ブルワリー併設のパブ「ブルーパブ」の登場だ。比較的早い時期にオープンしたブルーパブは、手づくりのビールをその場で飲めることを売りにしたレジャー型の飲食店という趣が強かった。しかしながら、近年のブルーパブは、鮮度のいいビールが飲めるだけではなく、その品質も申し分ないばかりか、料理にも力を入れるケースが目立っている。
続いて、海外クラフトビールが挙げられる。もともと欧米では、クラフトビール文化が早くから根付いていたが、日本に輸入されることはまれで、日本の消費者が海外クラフトビールに接する機会はほとんどなかった。それがいまでは、専門の飲食店や酒販店に行けば、あるいは通販を使えば、それこそ世界中のビールを飲めるようになった。
スコットランドの「ブリュードッグ」は、熱烈なファンを獲得して東京・六本木にオフィシャルバーを出店したし、同・北千住にある立ち飲みスペース併設のビール専門酒販店「びあマ」は、世界各地のビールを1000銘柄以上そろえ、ビール愛好家で連日盛況だ。
今年6月からキリンが「サブスク店」を開始
最後は大手メーカーの参入である。キリンビールが2015年に東京・代官山に店舗併設型ブルワリー「SPRING VALLEY BREWERY」(以下、SVB)をオープンした。当時は、「なぜ大手メーカーがクラフトビールを?」といぶかしがられたが、背景には「個性的な香りや味わいを求める消費者のニーズがある」と担当者に聞いた。
SVBは現在4カ所にまで増えたが、2018年8月にオープンした東京・銀座の「“BEER TO GO” by SPRING VALLEY BREWERY」では、2019年6月17日からサブスクリプション(定額制サービス)を始めるという。顧客の囲い込みを目的としているわけだが、それに対してコミュニティを求める傾向が強いビール愛好家がどのように反応するかが注目される。
「とりあえずビール」から「ビールを選ぶ時代」、さらには「好みのビールを探して自分のスタイルで味わう時代」へ。これからもますますビールの楽しみ方は多様化していくことだろう。