経常赤字は「輸出主導型経済」の行き詰まりと同義

4月、韓国の経常収支が7年ぶりの赤字に転落した。経常収支が赤字に転落した主な原因は、韓国の輸出が急速に減少したためだ。その背景には、輸出依存度の高い中国経済に減速感が出ていることに加えて、主力の輸出製品であるスマホなどIT関連機器の需要が落ち込んでいることがある。

特に、サムスン電子の半導体事業の減速は顕著だ。韓国銀行(中央銀行)は、今回の経常赤字転落は海外投資家への配当金支払いによる一時的なものと説明しているが、あまり説得力はない。むしろ、今後、韓国経済は一段と厳しい状況に直面する可能性が高いとみられる。

今年2月にサムスン電子が発表した「Galaxy Fold」。ディスプレーを直接折り曲げられる「折り畳みスマホ」として4月に発売予定だったが、その後に発売延期となり、6月7日現在、まだ発売されていない。(写真=dpa/時事通信フォト)

米国は中国の通信機器最大手ファーウェイへの制裁を発動し、中国はそれに対して報復すると明言している。米中の摩擦は激化し、今のところ、両国の折り合うポイントが見つからない状況だ。世界各国のスマートフォンや5G関連の通信機器への需要、IT関連の設備投資は落ち込むことが懸念される。

これまで半導体を輸出の主力製品として経済成長を実現してきた韓国にとって、経常収支の赤字転落は輸出主導型経済の行き詰まりを意味する。当面、輸出の大幅な回復と見込むことは難しい。それに加えて、足元のウォン安が輸入物価を上昇させ、経済を圧迫する懸念もある。それは、社会心理を一段と悪化させ、韓国の政治と経済の停滞懸念を高めることになりそうだ。

一握りの財閥企業が韓国全体を左右するいびつな構造

韓国経済には、2つの大きな特徴がある。

1点目は、韓国経済がサムスン電子を筆頭とする「財閥(チェボル)企業」の業績拡大に依存していることだ。サムスン電子1社の売上高は、韓国のGDP(国内総生産)の15%程度を占め、上位10社の売り上げを合計するとGDPの45%程度に達する。なお、サムスンの営業利益の70%程度が半導体事業からもたらされている。

これはかなりいびつな経済構造だ。事実上、サムスン電子など一握りの財閥企業の業績が、韓国経済の成長を左右している。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、経済格差の拡大と固定化を食い止めると主張し、財閥改革を標榜した。しかし、実際に改革を進めることは口で言うほど容易ではない。なぜなら、財閥企業の経営が揺らげば、韓国経済そのものが大きく傷つくからだ。