この指標は既存の満足度とは違うものです。ある企業の調査で「会社に満足している」と答えた人に対して「転職したいか」を聞いたところ、60%の人が「はい」と答えました。一方でeNPSが高い企業は転職希望者も少なくなる傾向にあります。従業員の離職を防ぎたい企業にとっては鍵となる数値となります。

eNPSを実際にどうやって人事に活かせばいいのか

それでは、eNPSを実際にどうやって人事に活かせばいいのか。われわれの会社が支援する場合ですと、会社のどんなところがどの程度従業員ロイヤルティに影響するかを見える化する、エンプロイージャーニーマップというものを作成し、そこから組織の改善策を練っています。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/taa22)

とあるベンチャー企業では、従業員の多くが会社の評価制度に不満を持っていました。そこで、その会社は「ありがとうポイント」という社内制度をつくりました。同僚に何かお願いしたり、親切をしてもらったりしたら、その同僚に対してありがとうポイントを、アプリを通じてあげられるというものです。ポイントは給料に上乗せされます。この制度の導入により、会社のeNPSは改善し、社員の会社に対する忠誠心が上がったのです。

逆にeNPSの数値はいまいちでも、社員が給料に対してはあまり不満を持っていない企業があったとします。その会社が離職を防ぐため給料を上げても、eNPSを向上させる効果は薄く、人件費がかさむだけになってしまうでしょう。

さて、eNPSが高い企業にはどんな特徴があるのでしょうか。企業ごとによって事情はさまざまですが、eNPSに限らず定期的に社員の様子を調査して、課題を把握しようとしている企業は高くなる傾向にあります。「焼肉きんぐ」などを展開する外食チェーンの物語コーポレーションは3カ月に1度のペースで調査を実施し、課題把握に努めています。同社は従業員の定着率を向上させていくために各店舗が何を改善すべきか、明確に特定できました。