標準税率を下回る地方税率を設定しようとした場合、地方債に関する制度上のペナルティや地方交付税を受け取りながら減税をすることに対する世論の風当たりなどをクリアしなければ減税政策を実現することはできない。そのため、首長や議会の非常に強いリーダーシップが必要とされることは言うまでもない。

地方税の税率は地方自治の根幹となるものだ。地方分権が徹底している米国の場合、地方税率を引き下げることは、地域の競争戦略や行政改革を推進する手段として重視されている。

「鉛筆舐め舐めできるようにしてある」

様々な行政需要が発生して行政コストがかかる都市部の税金が高いのに対し、地方は相対的に税金が安いため高税率を嫌った人々や企業が移ることもある。税率とは地域の戦略的意思そのものだと言えるだろう。

前述の八田氏によると、地方交付税の根拠となる地方団体の財政需要を合理的に測定するためにつくられた基準財政需要額にすら問題があるという。

「これはそもそも積み上げて計算できるようなものではなく、実際には鉛筆舐め舐めできるようにしています。全国で確保しなければならない警察や教育などはモデルを決めて国が全額を支払うべきです。そのうえで、地方交付税は人口や面積で明確に算出するとともに、それ以上の公園や公民館などのようなものは地方自治体が自分でやることが当然です」

八田氏の見識は問題の本質を突くものと言えるだろう。統一地方選挙は、国全体で地方自治とは何か、そして地方財政のあり方そのものを議論するよい機会だ。

地方創生は、規制改革で実現される

地方自治体が中央政府に財政依存する中で、地方を活性化させるための方法にはどのようなことが考えられるのか。そのための方法として規制改革によって地域の自由度を高めることは極めて有効である。

アベノミクス第3の矢「規制改革」は進んでいない一方、トランプ政権は新たな規制1本につき規制22本を廃止した。(時事通信フォト=写真)

安倍政権は国家戦略特別区域会議を創設し、19年2月14日までに全国で315認定事業を実行している。都市再開発やコンセッション方式導入などの派手な案件から、NPO法人設立手続きの迅速化のような地味な案件まで、その内容は様々である。

これらの全国にばらまかれた規制改革の果実は、補助金のばらまきとは対照的に中長期的に多くの果実を結んでいくことになるだろう。地方にとっては自らが発展していくための自由な環境を得ていくことに直結する。

しかし、規制改革を断行することには既得権者の抵抗もあるため、それらが政治的な支持を得ることは容易ではない。かつてはアベノミクスの第3の矢として位置づけられた規制改革であるが、第1の矢である金融緩和などと比べればとても大胆に進められているとは言えない。特に最近は、規制緩和は過当競争を招くとして、何でも無闇に反対するような一部の世論すらもある状況だ。