背景には一部の地方自治体がアマゾンギフト券などの金券を返礼品として配るなどして多額の寄付を集めたことなどもあり、疑問に思った多くの国民から制度のあり方自体に根本的な疑問が投げかけられたことがある。また、ふるさと納税制度は返礼品問題に見られたモラルハザードだけでなく、さらに根深い問題を内包している。

アマゾンギフト券という金券をバラマキ、金を集める地方自治体。

第一の問題点はふるさと納税の使途の妥当性である。たとえば、震災からの復興を目指す福島県飯舘村などは17年に村のホームページ上に「村では、復興の拠点として村のほぼ中心地に、いいたて村の道の駅 までい館を整備し、その復興拠点に、家族・愛・絆を感じる彫刻を復興のシンボルとしてぜひ建設したいと考えています」としている。

充実した返礼品のラインナップによって同村は18年度に9700万円のふるさと納税による収入を見込んでいる。しかし、道の駅に設置された彫刻(ブロンズ像)の購入費用として2990万円が使用されることを実際に知っていた寄付者は多くないであろうことは想像に難くない。

復興という観点から同村独自の理屈があるのだろうが、控えめに言ってもその妥当性については様々な意見があるものと思う。ふるさと納税は1度地方自治体側に渡ってしまえば自主財源となるため、首長一任などの形で事前に利用使途が明示されていないケースもある。今後、同制度の健全化を図るため、寄付者に対する使途のアカウンタビリティを確保することが課題となる。

地方自治は、民主主義の学校という虚実

第二の問題点は減収自治体に対する地方交付税による補填である。地方交付税交付団体は減収分の75%が地方交付税による埋め合わせを受けることができる。つまり、ふるさと納税の利用者の懐が減税で潤うと同時に、本来は税金が流出しているはずの地方自治体に中央政府から資金が追加で流れ込んでいるということになる。

もちろん、25%は税収が減少するために同自治体の全体の税収は減少するものの、当該住民はできるだけふるさと納税を使い倒したほうが中央政府からの補填というばらまきを得るという構造がある。このような財政上の緩衝システムがアマゾンギフト券などを返礼品とする地方自治体に寄付する歪な構造への批判が起きにくい状況を間接的に生み出してきているのだ。以上のように、ふるさと納税には問題も多いため、その制度のあり方を根本的に見直すことが必要である。

「地方自治は民主主義の学校」と呼ばれているが、現在の日本は学校の理念やその運営が滅茶苦茶な状態になったまま放置されている。19年は統一地方選挙だけでなく参議院議員選挙も予定されているが、我々は本当に大人として投票するだけの学びをしてきたのだろうか。新元号「令和」が始まる年、地方自治運営に関する真剣な議論が行われることに期待したい。

渡瀬裕哉(わたせ・ゆうや)
早稲田大学招聘研究員
国内外のヘッジファンド・金融機関に対するトランプ政権分析のアドバイザー。都市政策についても研究をしている。
 
(写真=時事通信フォト、Aflo)
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