バラマキ地方創生、なぜ街中にブロンズ像をつくるか
2019年は統一地方選挙の年であり、多くの地方自治体で地域の未来を決める活発な議論が行われている。有権者にとっては選挙カーの喧しい音を耳にする時期が来ただけかもしれないが、それでも地味だけれども私たちの生活にとっては非常に重要なイベントだ。
本稿では統一地方選挙に際して読者諸氏に地方自治のあり方自体を考えるきっかけを提示したい。そのため、一見して常識となっている地方活性化、特に地方創生を巡る前提をゼロから考え直してみるのはよいことだろう。
日本創成会議の増田レポートは事実誤認
まず、14年に発表された日本創成会議のレポート「ストップ少子化・地方元気戦略」(座長・増田寛也氏、以下増田レポート)の中で議論されて、その後に様々な地方移住促進政策の根拠になった「人口過密の大都市では、住居や子育て環境等から出生率が低いのが一般的であり、少子化対策の視点からも地方から大都市への『人の流れ』を変える必要がある」「『東京一極集中』は、少子化対策の観点からも歯止めをかける必要がある」という主張を取り上げたい。
実は、この主張を事実誤認であると断言する研究者がいる。八田達夫・アジア成長研究所理事長(政策研究大学院大学元学長)は、増田レポートを真っ向から「事実誤認」と否定している。
「たしかに、都市の中心部は出生率が下がります。しかし、それは結婚して子どもが生まれた場合に郊外に移り住むだけのことです。これは東京、福岡、仙台でも共通に観察されたモデルです。東京都の場合は都道府県を越えて周辺自治体に移り住む範囲が広がっただけです。首都圏全体で見た場合の出生率で考えるべきです」と八田氏は主張する。
つまり、東京都の出生率が低いこと自体は事実であるものの、それは子育て世帯が住環境を変えるために、千葉、埼玉、神奈川などに引っ越しをするだけのことでしかないのだ。したがって、出生率を上げるために、若者を単純に地方に移住させる政策には必ずしも妥当性はないということになる。
こういう政策は、角栄時代からあった
八田氏は言葉を続ける。
「僕が事実確認をするべきだとある媒体に書いたとき、当時の石破(茂)地方創生相はショックだったと思います。向こうの担当者が来ていろいろな弁解をしたけれども、要するに全く反論はないということでした。それを基盤に政策をスタートしたものだから随分いい加減なものになりました」