よい意味で「諦めること」も必要
カウンセリングではどう対処するかというと、エビデンスを重視します。「職場に足を踏み入れたら苦しくなるに違いない」。そんな不安を抱える人に、昨日はどうだった? おとといは? と聞くと、実は何も起こっていないとわかる。確率を計算してみるのもよいでしょう。自分が信じているものだけに囚われている状態から一歩引いて、客観的に検証してみると冷静になれるのです。
妄信に陥りがちな相手に対しては、3つの点を押さえて関係を築いてください。「(気持ちは)わかります」と共感すること。できたことに対して「すごいですね」「頑張りましたね」と承認すること。そして、「○○さんならできると思います」と主語をはっきりさせて励ますことです。
それでも言葉が心に届かない人もいます。例えば新興宗教や陰謀論を信じ込んでしまっている場合、いくら周りが頑張ったり、環境を変えても難しい場合があります。むしろ、周りが傷ついてしまうことも多い。そんなときは、「なんとかしようとしない」ことも大事。相手の背景だけは理解してあげて、よい意味で「諦めること」も必要です。
藤井 靖
明星大学心理学部心理学科准教授
臨床心理士。早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程臨床心理学研究領域修了。
明星大学心理学部心理学科准教授
臨床心理士。早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程臨床心理学研究領域修了。
(構成=伊藤達也 写真=iStock.com)