ダウ平均は「史上最高値」を更新する勢い
米国の株高が続いている。ダウ工業株平均は上昇基調で、昨年10月の史上最高値2万6828.39ドルを更新する勢いだ(※)。この背景には、トランプ大統領が米国の中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)に対して、強い利下げ圧力を加えていることがある。
※編集部注:5月7日にダウ平均は大幅安となった。終値は前日比473ドル安となる2万5965ドルで、下げ幅は約4カ月ぶりの大きさ。ただし1年前の2018年5月の終値(月次)は2万4415ドルで、依然として過去最高をうかがう水準にある。
トランプ大統領がFRBに圧力をかけるのは、2020年の大統領選挙に勝利したいからだ。米国の有権者の支持を得るには、株価の上昇が欠かせない。米国家計の金融資産は約36%が株式だからだ。株価が上昇すると、「大統領がよくやってくれた、生活が楽になった」「将来に関して明るい見通しが持てる」との実感を持ちやすい。
トランプ氏は、さらなる金利引き下げによって株価を上昇させ、有権者に自らの成果を示したい。それが、米国だけでなく世界的な金利の上がりづらさを支える要因となっている。
トランプ大統領への支持率は42%で安定推移
株価の動向は、その国のトップ(大統領、首相)の通信簿だ。株価が上昇すれば、支持率は上向く可能性がある。反対に、株価が下落すると、支持率は低迷しやすい。
株価が上昇すると人々の心理(マインド)は上向く。これを「資産効果」という。保有する資産の価値の変化が、需要に与える効果だ。簡単に言えば、株価が上昇すると、以前よりも多くの人が、高額商品などを買い求めるようになる。株価が上昇すると、何となく気持ちにゆとりができる。まさに、「景気は気から」である。株価は家計だけでなく、企業経営者のマインドにも無視できない影響を与える。
株価が上がるか、それとも下がるかは、その時々の大統領への支持に大きく影響する。株価が上昇すると、政治家は、自分の経済運営の手腕(成果)をアピールし、有権者からの信頼を得ることができるだろう。反対に、株価が下落すると、支持を獲得することは難しい。まさに、株価はその国トップの通信簿だ。
今年3月のCNNの世論調査によると、米国経済について好調だと考えている人の割合は71%で、これは2001年2月以来の高水準だった。トランプ氏の経済政策についても51%が肯定的な評価を下した。そしてトランプ氏に対する支持率は42%で、歴代大統領と比べると低い水準だが、安定している。