消費者が主体的に参加するデジタル経済圏「トークンエコノミー」が、世界で注目を集めている。だが日本は、仮想通貨への規制が強化され、乗り遅れ気味だ。日本ブロックチェーン広告協会理事長の高榮郁氏は「日本の独自文化の価値を高めるために、トークンエコノミーの導入は欠かせない」と説く――。

※本稿は、高榮郁『トークンエコノミービジネスの教科書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

20年前から変わらない日本のビジネス手法

私たちがインターネットという技術に出会い、ワールド・ワイド・ウェブという入り口からウェブにアクセスできるようになって、約20年が経ちました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

1990年代に登場したインターネットによって、私たちは時間や場所から解放され、eコマース(電子商取引)サイトで買い物をし、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を利用して友人や有名人などさまざまな人たちと交流することができるようになりました。

さらに、10年ほど前に登場したスマートフォンによって、いつでも、どこにいてもつねにインターネットに接続できる環境が整ったことで、いまや私たちの生活の中でインターネットはかつてないほど身近なものとなりました。

ではその一方で、ビジネスの手法は、この20年間でどれほど変化したでしょうか。

テレビで放送されるCMや街中の屋外看板などでは、大手ブランドの広告だけでなく、アマゾンや楽天市場などのIT企業の広告も増えてきました。また、広告を掲載する場所にも新たにインターネットというメディアが加わり、いまやウェブサイトやスマートフォンのアプリを閲覧すると、たくさんの企業広告を目にします。

しかしこれらの広告は基本的に、企業から消費者に対して一方的に送りつけられるという形式であり、「企業→消費者」というマーケティングの構図は、インターネット以前の時代と大きく変化していません。

世界ではトークンエコノミーが進行している

このような企業を主体とした一方向的なマーケティングを脱却する1つの手段として、ブロックチェーンを活用した、新たなデジタル経済圏「トークンエコノミー」を構築することがあげられます。

コインチェック事件などで、日本では仮想通貨(暗号資産)に対するネガティブなイメージが先行してしまいました。しかし世界では、医療業界、金融業界、広告業界など、非常に多くのジャンルでブロックチェーンを活用したプロジェクトが進行中です。

これらのプロジェクトでは、消費者の貢献度合いに応じて独自のトークンによるインセンティブを設け、消費者の積極的な参加を促す仕組みを用意することで、活発で持続的なプラットフォームが構築されています(これをトークンエコノミーといいます)。