ネット通販を始めた時期がずば抜けて早い

もうひとつ、私がヨドバシエクストリームで注目したのは、ネット通販を始めた「時期」である。先述したように、ヨドバシがネット通販を始めたのは1998年。楽天市場がネット通販に参入した翌年には、すでにネット通販事業をスタートさせている。

ちなみに同業のビックカメラがネット通販に参入したのが2003年。アマゾンが本の通販を始めたのが2000年で、物流センターを構えたのが2005年に入ってからである。この点からも、ヨドバシがネット事業に参入した時期がずばぬけて早いことが分かる。

また、ヨドバシ社員へのインタビュー記事によると、当時のサイト名は「ヨドバシ・パーソナルストア」という名称で、1日100件ほどの注文を受けていたという。受注管理システムがなかった時代に、1999年にはすでに店頭在庫と一元管理できるシステムを導入。2000年には「ヨドバシ・ドット・コム」を立ち上げている。

2000年前後のEコマース業界と言えば、楽天市場で卵を販売するネットショップが「月商100万円越えた!」と新聞で大きく取り上げられていたような時代である。その時期に、すでに自社サイトで売り上げが作れる体制を整えていたことを考えると、ヨドバシには相当のEコマースのノウハウが蓄積されていると考えてよい。

家電量販店の一企業と考えれば規模は小さいかもしれないが、ネット通販の経験と知識は、“後発組”の楽天市場やアマゾン以上のものがあると言える。

質の良い顧客を囲い込んでいるのではないか

もうひとつ加えるのなら、ヨドバシの長いネットショップ運営の歴史は「客質」にも大きな影響を与えているといえる。

1998年からネット通販の事業を展開しているとなれば、すでに20年以上の顧客の積み重ねがあることになる。ネット通販というビジネスモデルは、競合が少ない段階で顧客を獲得して、その顧客にネット通販の利便性を体験させれば、リピート客になる傾向が強い。実店舗のビジネスよりも老舗になればなるほど強く、メルマガとポイントで顧客を囲い込むことさえできれば、価格競争に巻き込まれにくくなり、売り上げが安定しやすくなる。

そのような観点で考えれば、ヨドバシは日本のネットショップの中でもダントツで歴史が古く、なおかつ質の良い顧客を多く囲い込んでいる可能性は高い。事実、日本生産性本部が2018年に行った顧客満足度調査では、通販部門で「ヨドバシ・ドット・コム」が5年連続で1位を獲得している。この実績は「ヨドバシの通販のサービスは素晴らしい」と捉えられるのと同時に、「ヨドバシの通販のサービスは素晴らしい」と答えてくれる良い客質の顧客が多いことを意味している。