なぜ「20歳の一人暮らし」が狙われるのか?

これと同種のものにDVD教材を約50万円で学生に売りつける「DVD教材販売トラブル」もある。こうしたトラブルを把握した法政大学や芝浦工大など首都圏の大学は、ウェブサイトなどを通じて注意喚起しているが、トラブル根絶には至っていないのが現状だ。

東京都の消費生活総合センターによれば、USBメモリを媒体とする投資関連学習教材の販売に関する相談件数は、2017年度は112件だったが、2018年度(概算)は216件。2014年に東京都はUSBメモリ教材の販売業者4社に業務停止(3カ月)命令の行政処分をした。その後、いったんは被害・相談件数は減る傾向にあったが、2019年度から再び急増しているという。

業者は大学生を狙い撃ちにしているが、その理由は次の8点に集約される。

1 学生であっても20歳以上は未成年者取消ができない
2 成年に達すれば、親の承諾なしにローンやクレジットカードを作ることができる
3 一人暮らしを始めることで親の監視の目が緩くなる
4 特に一人暮らしの場合、証券会社からの郵便物(書留なので実家住まいは親にバレる)を受け取れるのは本人だけなので騙すのに好都合
5 友人を傷つけたくないという仲間関係の維持に気を取られ過ぎる傾向があって、断ることができない
6 「(友人であっても)毅然と断る」ことも時には必要という教育を受けてこなかった
7 社会経験のなさと知識不足
8 経済的に苦しい学生が増える中、少しでもラクをして「勝ち組」になりたい願望がある

20代前半の学生はお金に対する不安が強く、稼ぎたい気持ちが強い

消費生活総合センターの担当者はこのように注意を促す。

「学校やバイト先などの友人から誘われることで“おいしい話”を信じてしまうケースが多いようです。また、20代前半の若い世代はお金に対する不安が強く、なんとか稼ぎたいという意識が強い。それもトラブルに遭う大きな要因です」

USBメモリ以外にも、仮想通貨をめぐる実体不明な投資話や、学生起業をすすめる名目での高額セミナーやオンラインサロン、商材の販売などのトラブルも増えている。簡単に短時間で大金を稼げる話には、当然ウラがあるので、親もわが子が誘惑されないように注意喚起が必要だ。

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出典=埼玉県HPの公表データを基に筆者作成