「口座を開いたってことはやるしかないんだよ」
そして、ネット証券口座をその場で作らされ、Bに消費者金融に同行され、学生ローンの借り入れをさせられてしまい、借りたお金はその場でUSBメモリと交換することになった(※代金が49万円なのは多くの業者が学生ローンの限度額の上限を50万円に定めているからだと思われる)。
ちなみに自称投資家Cは言葉巧みに「免許証持ってる? ちょっと写真、撮るね」などと言いながら、A君のスマホでその(免許証の登録番号や顔写真、住所が記載された)画像を撮り、そのまま口座開設した。ネット証券の確認画面は「A君は年収600万円の携帯電話会社販売員」ということになっていたそうだ。
ここまでの作業が終了すると、Cはますます増長しはじめた。
A君はCから「もう口座を開いたってことはやるしかないんだよ」と言われ、証券口座を“嘘”の申告で開設してしまった罪悪感もあって、「やめたい」と言えずに契約書にサインさせられたという。
「俺が音声を録音しているので強要はないことは明白だよ」
しかし、それだけで事は終わらない。
帰宅後、A君がUSBメモリの中身を見て「理解できない」そして「解約したい」と訴えると、さらなる“罠”が待っていた。「勉強会」という名の“有料セミナー”へのしつこい勧誘が始まるのだ。この“やり取り”の間でクーリングオフ20日間は過ぎ去ってしまう。
結局、A君は先物取引では儲けは出なかった。だが、Cからは「それは自分の勉強不足だよ」と一蹴され、Bは音信不通になり、しかも友人を勧誘できなかったので、入るはずの5万円も入らず、残ったのは消費者金融の借金。悪いことに、負けを回収しようと先物取引にドンドンとつぎ込んだ結果、さらなる借金を背負う火だるま状態に追い込まれていった。
A君は、BやCに強要されたと警察に届け出ればいいのではないかと思うが、Cに次のように畳みかけられて、結局、「泣き寝入り」せざるをえない状態となる。
「俺(C)が音声を録音しているので強要はないことは明白(A君の意思で契約)だよ」
「そもそも(A君は)契約書を持っていない(大事なものだから預かるとCに言われた)」
「A君自身が結果として詐称して口座を開設しちゃったしね」
A君は大学にも行けずにひたすらバイトで稼ぎ、借金を返済しようと必死に頑張ったものの、体を壊し、ここでようやく親が事態を把握することになった。