神奈川県に救急車の搬送患者数が日本一の病院がある。湘南鎌倉総合病院の救命救急センターを率いる山上浩さんのポリシーは「絶対に断らない」。しかも山上さんは8時間のシフト勤務を徹底しており、長時間の残業は一切しない。一体どんな仕組みなのか――。
救命救急医の山上浩さん(写真提供=毎日放送)

救急車での患者の受け入れ数が日本一の救命救急センター

神奈川県の湘南鎌倉総合病院は、救急車で搬送される患者の受け入れ数が日本一多い。一般的な救命救急センターの受け入れ人数は年間約5000人。その3倍近い年間約1万4000人を受け入れ、多いときは10分に1台の救急車が到着する。患者の「たらい回し」が問題視される今、このような病院は稀有だろう。

このER(救命救急センター)を率いているのが40歳の山上浩さんだ。ポリシーは「絶対に断らない」こと。20名の医師と4人の専属救命士がいるほか、総合内科や一般外科とも連携し、病院一丸となって臨機応変に動くことで「受け入れ数日本一」を実現した。

3月24日放送のドキュメンタリー番組「情熱大陸」では、「運ばれてきた患者は100%受け入れる」という信条を持つ山上さんに密着した。

「カラオケ、何歌ったんですか?」

年間、約1万4000人を受け入れている(写真提供=毎日放送)

この日、運ばれて来たのは90代の女性。自宅の階段で足を踏み外して頭を打ち、額に大きく傷口が開いていた。

【看護師】「はい、洗いますね~。大丈夫ですか?」

外科医を煩わせることなく、山上は直ちに自分で傷の縫合を進める。

【山上】「難しいなぁ……」

難しいと言いつつ、あっと言う間に30針の縫合を終えた。搬送されてくる患者は圧倒的に高齢者が多い。次に運ばれてきた90代の女性は、カラオケ店で転倒し足を骨折した模様だ。高齢者の搬送は骨折によるものが最も多い。

【山上】「カラオケ、何歌ったんですか? ちなみに一番得意なのは何です?」
【患者】「君が代」

あははと、場が和む。ヒリヒリするような現場にあって終始穏やかな自然体。「どんな状況でも全ての患者を受け入れる」山上がそう決めた理由は、過去の苦い経験にある。