定員超過で300人以上の留学生が退学

2018年9月、大阪市の専門学校「日中文化芸術専門学校」で300人以上の留学生が退学となっていたことが発覚し、新聞などで大きく報じられた。

同校は定員を大幅に上回る留学生を受け入れた後、管轄の大阪府などから是正を求められ、一部の留学生を退学にしていた。退学となった留学生のうち7人のベトナム人は、同校の張永勝・理事長らに損害賠償を求める訴えを起こしている。

なぜ、「日中」を名乗る専門学校にベトナム人留学生が在籍し、定員超過の末に退学という事態が起きたのか。この事件には、日本語学校から専門学校、さらには大学にも広がる偽装留学生ビジネスの闇が象徴されている。

「読売新聞」の調査(2018年10月8日朝刊掲載)によれば、留学生の割合が9割以上という専門学校は全国で少なくとも72校、学生全員が留学生という学校も35校に上っている。日中文化芸術専門学校も9割以上が留学生だった。

日本語学校の関係者と話すと、専門学校の「営業」に関する話題がよく出る。少子化で学生不足に陥った専門学校が、日本語学校を回って営業し、留学生の受け入れで経営難を凌ごうとしているのだ。首都圏の日本語学校経営者はこう話す。

手数料ビジネスで留学生を「売買」

「日本語が全くできなくても留学生を入学させる専門学校はいくらでもあります。私たち日本語学校に対し、専門学校側が確認するのは、留学生の出席率と学費の滞納があるかどうかだけ。学校から失踪せず、きちんと学費を払う学生なら誰でも入学を認めるのです」

日本国内の日本語学校を卒業した留学生は、語学力が問われず専門学校や大学に入学できる。つまり、日本語の全くできない偽装留学生であろうと、学校側が認めれば進学も可能なのだ。

留学生の入学が決まれば、専門学校から日本語学校へ「手数料」が支払われるケースもある。日本語学校は海外から留学生を受け入れる際、送り出し国のブローカーにキックバックを払っている、そのぶんを専門学校からの「手数料」で取り返す。こうしてブローカーから日本語学校、さらには専門学校へと、留学生たちが「売買」されていく。

かつて文部科学省は、専門学校における留学生の割合を学生全体の50%以下にするよう定めていた。だが、その規制は2010年に撤廃された。08年に「留学生30万人計画」がつくられ、政府ぐるみで留学生を増やし始めた影響だ。

留学生が50%を超える専門学校に対しては、今も所轄の都道府県から指導は入る。しかし、「日本人の学生を集める努力はしている」と答えれば、それ以上は咎められない。結果、留学生頼みの学校は増える一方だ。留学生が学生全体の9割以上を占める関西地方の専門学校幹部が言う。

「問題となった日中文化専門学校は、営利目的で大幅な定員超過をやっていました。それはさすがに行政も見逃さなかった、しかし、留学生を大量に受け入れている学校の実態は、うちも含めてどこも似たようなものですよ」