かつての留学生が学校経営者に

日本語学校の経営者には、在日中国人や在日韓国人が極めて多い。その背景には、日本語学校業界の歴史が影響している。

日本語学校の設立ブームは、政府が「留学生10万人計画」の達成を目指していた1990年代後半から2000年代前半にかけて一度あった。日本語学校を統括する一般財団法人「日本語教育振興協会」のデータによれば、日本語学校の留学生数は1996年の1万1124人が2003年までに4万2729人と4倍近くになった。同じ時期、日本語学校の数も287校から409校へと増えている。

現在の「留学生30万人計画」と同様、「10万人計画」の最中にも留学ビザの発給基準が大幅に緩んだ。結果、中国を中心に偽装留学生が大量に流入した。そして中国人に続く多さだったのが韓国人留学生だ。この頃、留学生として来日した中国人や韓国人たちに祖国とのコネクションを活かし、日本語学校の経営を始めた者がいる。だから日本語学校には、中国人や韓国人経営の学校が多いのだ。

2度目のブームで新興国から大量流入

「留学生10万人計画」は2003年に達成された。そして同じ年、日本中を震撼させる事件が起きる。中国人留学生3人による「福岡一家4人惨殺事件」である。日本人の夫婦と子どもの家族4人が殺害され、遺体が博多湾で見つかった痛ましい事件だ。

3人の中国人留学生は皆、日本語学校を入り口に来日していた。そのうち2人は私立大学と専門学校に進んでいたが、いずれも生活費の工面に苦労していた、そこで犯行に及んだのである。この事件もきっかけとなり、留学ビザの発給基準はいったん厳しくなった。

その後、事件のほとぼりが冷めた5年後の08年、福田康夫政権が「留学生30万人計画」を策定した。当時約12万人だった留学生を2020年までに30万人まで増やすという計画だ。そして今度は、中国に代わってベトナムなどアジアの新興国から偽装留学生が流入する。その結果、日本語学校の留学生が急増し、業界は2000年代前後とは比べものにならない“バブル”に沸くことになる。

自らも留学生だった中国人や韓国人、さらにはかつて中国などから偽装留学生を入学させていた日本語学校経営者は、「偽装留学生ビジネス」に精通している。違和感や罪悪感を抱くこともなく、偽装留学生の受け入れに邁進しがちだ。結果、彼らの経営する学校が規模を拡大し、大きな利益を上げることになる。