捜査対象者のプライバシー丸裸も「違法ではない」

今年に入り、検察当局が裁判所の許可を得ずに顧客情報を入手できる企業など計約290団体をリストアップしていたことが報道により明らかにされ、話題となった。

その団体には「主要な航空、鉄道、バスなど交通各社やクレジットカード会社、消費者金融、コンビニ、スーパー、家電量販店など」(1月4日東京新聞朝刊)が含まれるとされ、各社の情報をつなぎ合わせれば、裁判所の令状がなくても、捜査対象者のプライバシーを丸裸にできるという。

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聞くだけで怖くなるが、この行為がなぜ許されるのか。城南中央法律事務所の野澤隆弁護士は「『捜査関係事項照会』に基づく捜査手続きで、厳密にいえば違法ではない」と指摘する。

「たしかに、憲法で定める令状主義に違反している可能性はあります。とはいえ、刑事訴訟法等では、捜査当局が官公庁や企業などに対し捜査上必要な事項の報告を求めることができるとの規定があります。憲法がつくられた当時は少なくとも今のような個人情報がつまったカードが発行されることは想像されていなかったわけで、現在の運用は捜査当局らの解釈に事実上委ねられています。判例の一般的な傾向を見ると違法性があるとまでいえないのはほぼ間違いないのですが、適法性が高いとまではいえない状況です」

「Tカード」の問題が特に深刻である理由

東京新聞など、複数のメディアによれば、検察当局のリストには「Ponta」を運営するロイヤリティマーケティングや「nanaco」を運営するセブン・カードサービスが記載されていた。

しかし、今回とくに問題視されていたのが、ポイントカード最大手「Tカード」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)。その理由としてはCCCが会員規約に、捜査当局への会員情報の提供を明記していなかったためだ。Pontaなどは一応そのことについて記載はされていたという。

規約に記載してこなかった理由についてCCCの広報担当者は「各種法令に遵守してサービスを提供する旨は記載しており、情報提供は法令遵守の範疇に入ると判断していた」と説明する。