三井住友は三重県内に営業拠点がない。日本土建を担当するのは名古屋法人営業部だったが、これまで少額の融資を実行しているにすぎなかった。メーンバンクである三重県の地銀、百五銀行との絆が強かったのである。

しかも、別のメガバンクがすでに相談を受けている。三井住友は2カ月ほどの後れを取っていた。急遽、CA本部名古屋の部長、宮下広一、服部俊樹が中心となり、CA本部のフィナンシャルスポンサー部長の小森忠明のほか、建設業担当の業種グループ、担当である名古屋法人営業第一部、さらにはストラクチャードファイナンス営業部によるチームを組成。名古屋が日本土建の窓口となりつつ、東京の本部は審査部と交渉するという多角的な取り組みが始まった。

「我々は専門部隊が直接的に顧客企業と話し合うという形態をとっていました。営業店から専門部署につなぐという他の銀行の方式に比べ、ワンクッション少なかったので、その分、作業は相対的に迅速でした」(宮下部長)

このスピーディーさこそ、日本土建が銀行に求めていたものだった。結局、「初めに話がきてから、『うちがMBOに関連する融資をやりましょう』とお答えするまで1カ月弱でした」というのだから、確かにスピード感がある。

日本土建にとっても、オーナーである田村会長にとっても、MBOによる非上場化は失敗のリスクすらある、きわめて重たい経営戦略だった。それを三井住友が一気呵成のソリューション営業でサポートし、MBOは成功、日本土建の構造改革は大きく進展した。田村会長は今、こう述べている。

「原則論に囚われた銀行の貸し付け態度が、私はあまり好きでないんです。融資の決定までに時間がかかるのが一番嫌。その点、三井住友はよかった。気持ちよく借り入れもできた。伸びるなと思いましたよ。これからも長い付き合いをしてもらいたいというのが今の気持ちです」

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三井住友フィナンシャルグループ(三井住友FG)は、三菱UFJFG、みずほFGと比較し、最も安定した本業収益を確保している。行政処分の後遺症も回復途上にあり、営業力の勢いは復調していると見ていい。また、株式取得原価が他行に比べて低いため、株価下落への抵抗力がある。3月の株価次第では他行が赤字転落するリスクが出てくる中、同行は黒字を確保する可能性が高い。(日興シティグループ証券 シニアアナリスト 野崎浩成) ※業務純益ROEは2009年3月期会社計画に基づく。経費率は2008年9月期実績。株式損益分岐点は日興シティ予想。